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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

コロンビア初の左派大統領の誕生!コロンビア国民の反応は?

©️YouTube - Colombia elege Gustavo Petro, primeiro presidente de esquerda e ex-guerrilheiro

6月19日コロンビアで大統領選挙の決選投票が行われ、左派のグスタボ・ペトロが勝利を収めました。

得票数はペトロが50,44%(1,692,503票)に対し、落選したロドルフォ・エルナンデスは47,04%(9,923,729票)という結果に。敗れたエルナンデスは「ペトロにはコロンビアを導き、汚職に立ち向かい、国民を裏切らないで欲しいと考えています。私は敗北しましたが、私の政策を支持してくださってありがとうございました。」とSNSを通して敗北を認めるコメントを発表しています。

今回の選挙で注目されていたテーマは「変化」。どんどん開いていく貧富の差や悪化していく治安、同じ家族間で世代交代していくだけの政治家たちに嫌気がさした国民たちの口から「Cambio(変化)」という言葉が頻繁に発せられていた今回の大統領選。コロンビアでは左派が政権を握るのは歴史上初めてで、当選したペトロには大きな期待が集まっています。

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©️YouTube - Los nombres que ya suenan para el gabinete de Gustavo Petro

 

「今日からコロンビアは変化するのだ」

「この歴史的な日に感謝します。私たちはコロンビアに、ラテンアメリカに、そして世界に新たな歴史を刻み込んでいるのです。これはあなたたちなしでは成し遂げられませんでした。今、あなたたちこそが変化する力、愛の力、そして希望の力なのです。」

「今日からコロンビアは変化するのです。コロンビアは新しくなります。」

当選が確実となったペトロは40分にわたる演説の中で新しいコロンビアに訪れるであろう「変化」について何度も口にしました。

この当選演説の中でペトロは息子の遺影を持った一人の女性にマイクを渡します。彼女の息子であるディラン・クルス(当時18歳)は、2019年に行われた教育を求めるデモ行進に参加している最中に、暴動鎮圧機動隊(ESMAD)に頭を打たれ死亡しました。

「私の息子や過去に政府によって命を奪われた国民の威厳のために声を上げます。大統領、あなたを歓迎します。あなたは私たち全員の希望なのです。あなたは私たちのような貧困層、そして黒人、白人、裕福層の希望です。ペトロ大統領、コロンビアにようこそ!」

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息子ディラン・クルスの遺影を持ち演説する母親©️YouTube - Habla la mamá de Dilan Cruz en discurso de Gustavo Petro | El Tiempo

昨年4月に行われた反政府デモでは暴動鎮圧機動隊(ESMAD)によって44人の国民の命が奪われ、この出来事はコロンビアで長く続く伝統的な政治に対して疑問を抱く大きなきっかけとなりました。今回当選したペトロはこの暴動鎮圧機動隊(ESMAD)や警察機関のあり方を見直すことを公約として掲げています。

 

初の黒人女性副大統領

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©️YouTube - Entrevista a Francia Márquez, vicepresidenta electa de Colombia: "No vamos a expropiar a nadie

今回の選挙で終始注目を集めていた人物の一人がフランシア・マルケスです。(過去記事:コロンビア初の黒人副大統領となるか。今注目の人物フランシア・マルケスとは?)ペトロが当選したことによってコロンビア史上初の黒人副大統領になることが決まりました。

彼らのスローガンは「Vivir sabroso(楽に生きる)」。この言葉はフランシアのルーツであるアフリカから来た考え方で、アフロ系の多い貧困地区では頻繁に口にされる言葉なのです。しかしペトロを支持しない層はこの言葉を怠け者の言葉だと非難してきました。これに対してフランシアはこの様に言葉の意味を説明しています。

「Vivir sabroso(楽に生きる)は尊厳を持って生きることを意味しています。国からの保護や保障もなく貧困の中で生きている私たちが、今まで与えられてこなかった人権を持って生きることを意味しているのです。」

フランシアは貧困地区出身の黒人。更に女性でシングルマザーということから、立場の弱い国民の気持ちを代弁してくれるのではないかと、彼女の様な社会的弱者から大きな支持を集めています。ペトロの当選が決まった時「おめでとうフランシア」と、多くの国民がペトロではなくフランシアに祝福の言葉を投げかけていたことがとても印象的でした。

下の動画に映る黒人男性はペトロの当選が決まるとベランダに飛び出し「初めての黒人副大統領だチクショウ!!」と拳を突き上げ喜び、その後家族と抱き合って嬉し涙を流しています。国に忘れられた人々と言われている貧困地区の国民たちにとって、フランシアの存在がどれだけ意味を持つものなのかがこの動画から見て取れると思います。

 

パスポート申請の増加

ペトロの当選が決まりブカラマンガ市ではパスポートの申請が600%増加したという報道があります。これは「ペトロに対する恐怖」が生み出した現象でしょう。

ペトロを支持しない層には、ペトロが大統領になることでコロンビアが国としてダメになってしまうと思っている人が大勢います。実際に私の身の周りにいるペトロの不支持者たちは口を揃えて「ペトロが勝ったらコロンビアはベネズエラみたいになってしまう。我々の私有地を全て取り上げて独裁政権を作り出そうとしているんだ。ペトロはELN (ゲリラ軍)と繋がっているから治安もどんどん悪くなる。」と言っています。実際これらの話に根拠はないのですが彼らはそれを信じて疑わずペトロが大統領になる事を恐れており、ペトロが大統領になるなら国外に避難すると宣言していた人も少なくありません。

これらの反ペトロ派の噂に根拠がないにしても、ペトロの公約には野心的なものが多く専門家の中にはコロンビアの将来を心配する声が聞かれることも事実です。

賛否が大きく分かれる公約のひとつとして掲げられるのが「新規石油プロジェクトの禁止」。環境問題に対する意識も高いペトロは、石油ではなく再生可能エネルギーに力を入れていきたいという姿勢を見せています。石油の採掘を徐々に減らし、再生可能エネルギーに切り替えていくことで雇用も増やすという目的がある様ですが、石油の輸出はコロンビアの国内総生産の3,3%を占める産業。これをなくしてしまうことはコロンビアの経済に大きな影響を与える可能性は否定できません。

また貧困対策として年金や健康保険制度の改革も公約に掲げていますが、その財源を富裕層や企業への課税の強化で補おうとしていることから富裕層の不満が高まっており、更にこの増税や予測の難しい新しい政権発足が原因で外資系の企業がコロンビアに投資する事を躊躇してしまうことが心配されています。

 

国民の期待に応えられるか

ペトロの当選を受け、多くのペトロ支持者が街に繰り出し勝利の行進を行いました。その多くはこれからのコロンビアの未来を担う若者たち。地元メディアのインタビューを受けた参加者たちは口々にペトロに対する期待とコロンビアの将来に対する希望について語っていました。

貧富の差、失業率、汚職、治安の悪化など、問題が盛り沢山のコロンビア。ペトロがもたらす変化で全ての国民が「Vivir sabroso(楽に生きる)」ことができるのか。8月7日に発足されるペトロ政権に、多くの国民の期待が集まっています。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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