コラム

休校のいま提案したい、新学期は9月始まりにしてみては?

2020年03月26日(木)19時00分

maroke-iStock.

<新型コロナウイルスの影響で、ずっと家にいるようになった中学生の息子と話した。世界の多くの国では学校は秋に始まる。日本はなぜ春なのだろう?>

夏休みを描いたロックの名曲、アリス・クーパーの「School's Out(スクールズ・アウト)」。この歌は1972年に米国のトップテンチャートに登場して、7位まで上昇した。

UKではしばらく1位に輝き、西ドイツではなんと半年以上長くヒットチャートに居座っていた。これは当時中学生だった僕の耳をもくすぐっていた歌なのだ。

人気の秘密は反抗的なところにあるだろう。ジャンル分けすれば、これがショックロックとかグラムロックに入るけれど、パンクの無秩序主義な雰囲気と通ずるところがある。

歌詞には「School's out forever(夏休みだ、永遠にお休みさ)」のほか、「No more pencils/No more books/No more teacher's dirty looks(鉛筆や教科書、そして先生の嫌な視線〔まなざし〕とはおさらばだ!)」もあって、さらには「School's been blown to pieces(学校はバラバラに吹っ飛ばされりゃいい!)」とまで気持ちがエスカレートしている。

この歌における夏休みは永遠たるもの。学校だけでなく教育そのものがきれいさっぱり消える。さすがに、地域によっては放送禁止曲にもなっていたのもうなづける。

今年、3月初旬くらいから世界中の多くの小中高校が休校になった。そして、国によっては、学校がいつまた復活するかは不明。まさに「スクール・イズ・アウト」。

我が家にいる中学生の息子も、休んでいる生徒の一人。彼の学校は安倍総理の2月27日の要請を受け、3月2日から休校となった。ただ、2月28日から生徒が自己判断で欠席をする場合、それを欠席として扱わない、とも表明した。その発表を受けて、保護者の僕は大事を取って一足早く2月末から休ませている。

さて、ずっと家にいるようになった息子と毎日どう向き合うか。まず、父親にとって青春の曲である「スクールズ・アウト」を聴かせ、そこに描かれている無秩序に触れてもらおうではないか。

危機という言葉は危険と機会で成り立っている

すると、約50年も前の歌なのに、息子はずいぶん堪能した様子だ。ついでに僕は、永遠の休校は本当はあり得ず、遅かれ早かれ新学期がいずれ始まるよ、と息子に諭した。

そのとき息子にされた酸っぱい顔をコミュニケーションを始める合図として捉え、以下の会話を展開した。

「そう言えば、日本の新学期は4月だよね」

息子が小学校を過ごしていたドイツでは、新学期は9月に始まる。西洋をはじめとして多くの国がそうだ。

「そうだね」

「昔、日本も新学期が9月だったけれど、100年くらい前に政府の都合で変わった」

「ふん」

「9月に変更したほうがいいと思う人もいるが、どうしてだと思う?」

「合わせたほうが、転校がしやすくなるため?」

プロフィール

トニー・ラズロ

ベストセラーとなったコミックエッセイ『ダーリンは外国人』(小栗左多里&トニー・ラズロ、メディアファクトリー)の主人公。1960年、米ニュージャージー州生まれ。1985年から日本を拠点にジャーナリスト、講師として活動する。著書に『ダーリンは外国人 ベルリンにお引越し』『英語にあきたら多言語を!――ポリグロットの真実』『手に持って、行こう――ダーリンの手仕事にっぽん』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国の世界融資、途上国でなく米国など富裕国に集中=

ビジネス

エヌビディア、強気見通しでAIバブル懸念は当面後退

ワールド

経済対策の国費21.3兆円で最終調整、事業規模は4

ビジネス

エヌビディア、強気見通しでAIバブル懸念は当面後退
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 8
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story