一度も実施しなかった「徴兵制」をついに始動...カンボジア首相の「真の思惑」とは?

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<2006年の徴兵法成立から18年間の休眠を経て、初めての徴兵へ。背景にはタイとの緊張した関係が──>
800キロにわたって国境を接するタイとの間で長年、国境付近の領有権争いが続いているカンボジア。5月28日に勃発した軍事衝突によってカンボジア兵1人が死亡し、両国関係が過去最悪レベルに冷え込むなか、国防強化の一環で徴兵制が正式導入されることになった。
カンボジアでは18~30歳の全国民に18カ月間の兵役を義務付ける徴兵法が2006年に成立していたが、これまで一度も実施されることはなかった。
7月14日、フン・マネット首相は、長らく休眠していたこの制度を26年に施行する方針を発表(対象は18~30歳の男性で、女性は志願制)。兵役期間を従来の18カ月から24カ月に延長するなどの見直しを加える意向も示唆した。
法案が国会で承認されれば、カンボジアはシンガポールやベトナム、タイなどに続いて東南アジアで6番目の徴兵制の採用国となる。
フン・マネットは「他国を破壊するためではなくわが国の領土の一体性と安全を守る」ため、国防費の積み増しも表明している。