ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イスラエル全面戦争は「起こらない」と断言できる理由

A Victory for Israel

2025年6月17日(火)14時45分
マシュー・クレイニグ(米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」スコウクロフト国際安全保障センター副所長)

しかもイスラエルの防衛網は強固で、昨年4月と10月にイランはイスラエルにミサイルとドローン(無人機)攻撃を行ったが、大した打撃を与えられなかった。6月13日には約100機のドローンで報復攻撃を行ったが、一部は迎撃されたし、深刻な被害は伝えられていない。

とはいえ、イランはテロ組織や代理勢力を使って中東に限らず世界中で攻撃を仕掛けられる。また、ペルシャ湾を航行する船舶を妨害・攻撃することも可能だ。ホルムズ海峡の封鎖という強硬手段も残されている。


だがイラン経済の頼みの綱はエネルギー輸出。そんなことをすれば自分の首を絞めることになる上、外交面で頼りにしている中国にまで見放されかねない。

アメリカの情報機関は25年の「世界脅威評価」で、イランは「中枢神経系に作用する化学物質の開発を、攻撃目的で進めている可能性がある」「生物兵器および毒素の研究開発を断念していないとみられる」と指摘している。

つまり、次にイスラエルや米軍基地に向けて発射されるミサイルには、大量破壊兵器が搭載されるかもしれない。

ただし、イランの指導部も、やりすぎればアメリカとの本格的な戦争を招くリスクは理解している。そうなれば自身の政権崩壊に直結しかねない。

今回のイスラエルの攻撃はイラン政権を著しく弱体化させるだろう。しかし、長年の悲しい現実として、イランの指導部は権力を維持するために民間人を殺害することもいとわず、国民も政権を倒すために命を懸けるほどの蜂起には至らない。

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