最新記事
漁業問題

中国が支配する「闇の漁業ネットワーク」...他国のEEZ内で地元漁師を苦しめる違法操業の実態とは

China Dominates 'Dark' Network Behind Global Fishing Crisis

2025年6月5日(木)17時55分
マイカ・マッカートニー
中国の漁船

中国の漁船 Igor Grochev-shutterstock

<中国などの遠洋漁業船が、監視が緩い南米地域で海洋資源を違法に乱獲している。違法操業には漁船だけでなく、多くのプレイヤーが関わっているようだ>

南米沖で違法操業が疑われる中国のイカ漁船団。その背後には、巧妙に組織化された国際的な「闇の漁業ネットワーク」の存在がある。アメリカ、ワシントンDCに拠点を置く非営利団体、C4ADSが新たな報告書の中で明らかにした。

漁船は、船舶位置情報システム(AIS)を意図的に停止させ、「暗闇」状態で操業することで、南米漁業に依存する現地漁師たちの生計を脅かしている。

本誌は在パラグアイ中国大使館、在ウルグアイ中国大使館にコメントを求めている。


水産物需要の高まりと沿岸資源の枯渇を背景に、漁船は本国から遠く離れた公海へと進出、長期にわたり監視の届かない海域で操業を続けている。その結果、「違法・無報告・無規制漁業(IUU漁業)」や労働搾取のリスクが増大している。

遠洋漁業を行う漁船の約60%を中国と台湾が占めているが、その中でも中国漁船は南米諸国の排他的経済水域(EEZ)内で違法操業を行っているとの批判が強まっている。南米各国では違法漁業の規制強化と取り締まりなどの制度見直しを求める市民の声が高まりつつある。

中国を中心とする遠洋漁業船の主なターゲットは、ペルー沖のアメリカオオアカイカやアルゼンチン沖のアルゼンチンアカイカだ。

C4ADSによれば、太平洋や大西洋で操業する遠洋イカ漁船の69%が、違法行為やその懸念のある船舶と所有者が同じだったという。これら地域は理論上、地域漁業管理機関(SPRFMO)の監視下にあるものの、実際の取り締まりは不十分だ。特に大西洋側では監視の枠組みすら存在しない。

さらに、このような漁船は港に寄港する頻度が少なく、監視や取り締まりが困難を極める。

経営
「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑むウェルビーイング経営
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

チリ大統領選で右派カスト氏勝利、不法移民追放など掲

ビジネス

インタビュー:海外投資の過半を米国に、国際的なガス

ワールド

イスラエル首相、反ユダヤ主義助長と豪首相を非難 ビ

ビジネス

インタビュー:プライベートデット拡大へ運用会社買収
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中