インタビュー:海外投資の過半を米国に、国際的なガス取引も強化=東京ガス社長
写真は東京ガスの笹山晋一社長。都内で2024年2月撮影。REUTERS/Nobuhiro Kubo
[東京 15日 ロイター] - 東京ガスの笹山晋一社長は、次期中期経営計画(2026─28年度)に盛り込んだ海外での成長投資3500億円の過半を米国に投入する考えを示した。ガス需要の高い現地で開発から販売まで「バリューチェーン」を構築するとともに、国際的なトレーディング機能を強化し、収益拡大を図る。
ロイターのインタビューに答えた。「優先順位が一番高いのは北米だ。テキサス州周辺ではデータセンターや半導体工場など、まだまだ電力需要が伸びる余地があり、ガスを使うニーズはかなり高い」と語った。「米国は欧州とアジアの真ん中に位置するので、グローバルなトレーディングにも活用していきたい」とも述べた。
東京ガスは北米のシェールガス事業を強化しており、米テキサス州とルイジアナ州で天然ガスの開発と生産を手掛けるロッククリフ・エナジー社を23年末に買収。その後に現地の販売会社に出資した。今年4月には米シェブロンとテキサス州でシェールガスを共同開発すると発表した。
笹山氏は「シェールガスの上流に投資してきて、ここ数年は東テキサスを中心としたエリアに選択と集中を図り、コスト競争力も高めてきた」と説明。「これにしっかり投資をしていき、収益を中計期間中に上げながら、中下流にもバリューチェーンを伸ばしていく」と語った。
東京ガスは米エネルギー企業グレンファーンがアラスカ州で開発を計画する液化天然ガス(LNG)の調達も検討している。10月に同社と関心表明書を結んだと発表した。
笹山社長は「(太平洋側で)距離的にも近いし、(輸入する際に)チョークポイント(急所)を通ることもないのでリスクは小さい」と説明した。「プロジェクト自体はまだ不確定なところが多く、関心表明を出すことで条件などが徐々に出てくると思って表明している」と話した。まだ詳細な情報は得ていないという。
<サハリン2、途絶なら安定供給に影響>
笹山社長はこのほか、米国による対ロシア経済制裁の例外措置が19日未明に期限を迎えるサハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」について、「だんだん言われ方は厳しくはなってきてるという風には思っている」としつつ「本当にそこ(19日)でだめになる蓋然性は今の時点ではそれほど高くないと思う」との見方を示した。
東京ガスはサハリン2からLNGを調達。日本政府は例外措置の延長を求めており、可否が注目されている。
笹山社長は仮に延長されなかった場合についても、欧州連合(EU)によるロシア産天然ガスの輸入停止も27年終盤となっていることを挙げ「今直ちに途絶するリスク、懸念はかなり少ないと思っている」と説明。その上で「日本の安定供給にも寄与していて、これが急になくなると影響はあると思う。基本的には延長されるのが日本にとっては良いと思っており(政府と)そういう話をしている」とした。
台湾に関する高市早苗首相の発言を巡って日中間の緊張が高まっていることについては、中国ビジネスは行っておらず直接的影響はないとしたが、物流面では「LNGを輸入してくる時に、台湾海峡などがチョークポイントになるリスクはあるとは思う」と指摘。「われわれに限った話ではなく日本全体の課題だ。一応、いろいろなリスクは想定して頭の体操くらいはしておかなければならない」と述べた。
(岡坂健太郎、大林優香 編集:久保信博)
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