「まさかの敗北」ロシアの消耗とプーチンの誤算...プーチンが語り始めた後継者
Putin Is Not Winning the War
仮に戦況が良ければ、あるいはこれが明らかな防衛戦争なら、外交能力の不足は問題にならず、先行き不安や経済的困窮は耐え得るレベルにとどまり、政治的な不満も抑え込めるだろう。
第2次大戦中のソ連がまさにそうだった。今のプーチンはそれとは逆の立場に置かれ、「戦略的袋小路」からの脱出の道筋を国民に語って時間稼ぎをすることさえままならない。
トランプも業を煮やす
今のロシアは2つの深刻な軍事的ジレンマに直面している。
1つは戦況を動かせないこと。ロシア軍はウクライナで支配地域をじりじりと広げているから、ロシア軍のほうが勢いがあるように見えるが、その勢いは何の役にも立っていない。その証拠にロシアはウクライナ東部の都市ポクロフスク攻略で苦戦を強いられ、多大な犠牲を出している。
ウクライナ侵攻開始後のロシア軍の死傷者数は今年4月末時点で推定79万人、行方不明者は4万8000人。今年に入ってからだけでも10万人の死傷者が出た。
このペースでいくと、年末までに死傷者は100万人に上りそうだ。それだけの人的損害を出しても、侵攻開始時と比べ、ロシアの戦略的状況は全く改善されていない。