「関税率115%引き下げでも油断できない」米中通商交渉は90日の一時停戦
A Temporary Truce

Dilok Klaisataporn -shutterstock-
<双方が大幅な引き下げで合意したが、常に戦争のリスクをはらむ米中の緊張状態は続く。考えられる長期的な帰結は「凍結された紛争」だ>
スイスのジュネーブで5月10〜11日にかけて行われた米中の通商交渉は、追加関税の115ポイント引き下げで合意するという劇的な展開を迎えた。
アメリカは中国からの輸入品に対する関税を145%から30%に、中国はアメリカからの輸入品に対する関税を125%から10%に引き下げた。両国間の通商分野での緊張を大きく緩和することになる措置で、世界の金融市場が上昇に転じたのもうなずける。
とはいうものの、両国の関税率は現代の基準から見ればまだまだ高い。1月1日時点での、貿易加重平均により算出したアメリカの平均関税率は2.2%だったが、現在では17.8%まで上昇しているとみられる。これは1930年代以降、最も高い水準だ。
要するに、新たな基準線が引かれたということなのだろう。無関税貿易の時代はもはや過去のものとなったのだ。
それに、今回の関税引き下げは90日間の暫定措置だ。米中の交渉は続いており、議題には解決の難しい問題が多く含まれている。中国の為替管理政策や産業補助金制度、さまざまな非関税障壁──。
つまり今回の発表はせいぜい、停戦にすぎない。戦略的競争の激化という長期的サイクルに米中がはまり込んでいるという構造的な現実が変わることもないだろう。このサイクルでは、緊張の激化と緩和が繰り返されていくはずだ。
どちらも相手を倒すことはできないから、考えられる長期的な帰結は「凍結された紛争」(軍事衝突は起きていないものの、事態が悪化して戦争になる可能性のある緊張状態)だ。
そして折に触れて、事態をエスカレートさせることで相手より優位に立とうとする動きが起きることだろう。現状、どちらが有利な立場に立っているかは専門家の間でも意見が分かれている。
日本の姿勢は吉と出るか
今後も情勢の安定は望めそうにない。
アメリカはこれまでのところ、相手がどの国であっても2国間貿易交渉における基本的な目標を変えていない。それはモノの輸入を減らす一方で、アメリカ産品の輸出の妨げとなる各国の「不公正」な非関税障壁を根絶やしにし、サービス以外の貿易収支の赤字を減らすことだ。
8日に発表されたアメリカとイギリスの合意からもそれはうかがえる。イギリスはアメリカから多少の譲歩を引き出しはしたが、関税率は追加関税が発表された4月2日時点よりも高い10%となった。それにアメリカは一部のイギリス製品に対し、低関税での輸入を認める上限を設定した。
オーストラリアなど、アメリカと軍事同盟関係にある太平洋の国々は、安全保障における対米依存を理由に、貿易分野での譲歩を求められる可能性もある。日本は安全保障と貿易を切り離すとの考えを示しており、今後の交渉の行方が注目される。
東南アジアの製造業の盛んな国々は、対中関税を回避するための生産拠点の分散先になっている。だが今後、ベトナムなどの国々にとって、不安定な状況が続くなかで米中の間をうまく泳ぐのはさらに難しくなるだろう。経済への影響も大きくなるはずだ。
これらの国々も日本と同じで、2つの大国の間でバランスを取るのには慣れている。だが今後は、これまで以上の綱渡りを強いられそうだ。
Peter Draper,Professor, and Executive Director: Institute for International Trade, and Jean Monnet Chair of Trade and Environment, University of Adelaide
Nathan Howard Gray,Senior Research Fellow, Institute for International Trade, University of Adelaide
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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