最新記事
中国政治

中国・秦剛前外相の失脚は本当に女性関係のせいだったのか?

Did a Sex Scandal Derail China's Foreign Minister?

2023年10月3日(火)17時55分
アーディル・ブラー

中国の若き外相として歩み始めたばかりだった秦剛(6月18日、北京の釣魚台国賓館) REUTERS/Leah Millis

<「不倫」相手とされる女性が、アメリカで代理母を通じて子どもをもうけていたなどの新情報も出て謎は深まるばかり>

<動画>「不倫」相手のインタビューを受ける秦剛

中国の秦剛・前外相の解任劇をめぐる謎は、中国国営メディアの女性ジャーナリスト、傅暁田との不倫疑惑に関する新情報が浮上するなどますます深まっている。

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によれば、秦が解任されたのは、中国共産党の内部調査でこの不倫が明らかになったせいだと、中国政府高官らは説明を受けていたいう。公式には「ライフスタイルの問題」という表現で、これが性的不品行を意味する。

香港を拠点とするフェニックステレビ(鳳凰衛星)である傅は、秦が7月に外相を解任される前、中国のSNSサイト「新浪微博(ウェイボー)」に息子アーキンに関する投稿を行った。父親についての言及はなかったが、英フィナンシャル・タイムズ紙と米CNNは、2人の関係は秦が駐英公使だった2010年のロンドンで始まったと考えられるとしてその詳細を報じている。

フィナンシャル・タイムズによれば、傅は2022年にアメリカで代理母を通じて子どもをもうけていた。中国では代理出産は違法だ(中国の裁判所がこれまで代理出産のケースについて厳しい判決を下したこともないのだが)。

習近平派の内部抗争か

秦は習近平国家主席の信頼が厚く、習の後押しによって外務省でスピード出世を果たし、外相にまでなった。秦が不倫を理由に外相を解任されたというのが真実であれば、珍しいケースだろう。最近の中国で国レベルの政治家が不倫や性的不品行などの理由で更迭された例はない。

中国専門家たちは、強大な権力を持つ習が自ら登用した秦の失脚には、それ以外の理由があるのではないかと考えている。

ロンドン大学東洋アフリカ学院・中国研究所のスティーブ・ツァン所長は、習のお気に入りだったことが解任劇と関係している可能性がある、という。

「習は(2022年10月の)中国共産党第20回党大会までに古くからある派閥を一掃し、中国共産党を『習近平派』一色に塗り替えた。そのような体制の中では、習派の中に新たな派閥が生まれる。そこで派閥抗争が起これば、ライバルについての讒言を習に告げ口する風潮につながりやすい」と、ツァンは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、最優遇貸出金利据え置き 市場予想通り

ワールド

米大統領選、不公正な結果なら受け入れず=共和上院議

ワールド

米大統領補佐官、民間人被害最小限に イスラエル首相

ワールド

ベゾス氏のブルーオリジン、有人7回目の宇宙旅行に成
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中