最新記事

対ロ関係

「ドイツは本当に西側の仲間なのか」英ウクライナ特使

Boris Johnson's Ukraine Trade Envoy Says Germany 'Not Totally Our Friend'

2022年4月28日(木)11時01分
デービッド・ブレナン

とはいえ、ロシアがウクライナに侵攻したことで、ドイツはロシアとの関係に歴史的な再評価をせざるをえなくなった。今年2月、今回の侵攻は「新しい時代」の始まりだとショルツは述べた。

数十年にわたる対ロシア融和政策がすぐに放棄されることをドイツの同盟国は期待したが、そうはいかなかった。邪魔をしたのは、ドイツ政財界のエリートたちのロシアとの深い結びつきだ。

ショルツは、ドイツがロシア産化石燃料への依存から離脱するためには時間が必要だと述べた。EUのロシア産石炭輸入禁止はドイツの圧力で1カ月先延ばしになり、8月に実施する予定だ。ドイツの輸入量の半分を占めるロシア産天然ガスに関しては、完全な輸入停止は2024年半ばになる見通しだ。

直ちに禁輸措置をとれば、数十万人の雇用を犠牲にする深刻な不況を招きかねないと、ショルツは繰り返している。

EUは現在、ロシア産石油の輸入制限を含む第6弾の制裁を検討している。躊躇しているのはドイツだけではない。ハンガリー、イタリア、オランダなど他のEU諸国も、ロシア産化石燃料の輸入禁止には慎重な姿勢をとっている。

ロシアは27日、ポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を止め、一段と圧力を強めている。

問われる西側の覚悟

「私が気になるのは、西側諸国の結束がいつまで続くかということだ」と、マイヤーは25日の講演で語った。

「すでに亀裂は見え始めている。ロシアが戦争の速度を上げれば、ウクライナへの支援を強化しなければならないという西側への圧力は高まっていくだろう。ウクライナへの軍事支援はもうすぐ、ロシアと直接戦争をしないという西側の方針が成り立たないほどのレベルになってしまう」

「そこで2つの大きな疑問がある。われわれにはロシアとの全面戦争にどこまで踏み込む覚悟があるか?そして、どれだけの経済的苦痛を耐える覚悟があるのか?この答えが、西側諸国の結束を左右すると思う」

「ウラジーミル・プーチンが勝利を収めれば、NATOが中立を唱え、アメリカ軍が不在のなかでは、ロシアがヨーロッパ全体を勢力圏におさめる道を歩むことになる」と、マイヤーは主張した。

アンゲラ・メルケル前首相とその政権は、対ロシア政策での失敗を厳しく批判されている。16年間に及ぶメルケル政権下で、2本の天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」など、ロシアとの共同事業が進められた。またメルケルは、2008年にウクライナのNATO加盟を阻止する側にも加わっていた。

kawatobook20220419-cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス) ニューズウィーク日本版コラムニストの河東哲夫氏が緊急書き下ろし!ロシアを見てきた外交官が、ウクライナ戦争と日本の今後を徹底解説します[4月22日発売]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米最高裁、同性婚合法化判決の撤回申し立てを却下 

ワールド

シリア暫定大統領がホワイトハウス訪問、米国は制裁法

ワールド

COP30実質協議開始、事務局長が参加国に協力呼び

ビジネス

ビザとマスターカード、手数料を5年間で380億ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中