最新記事

海洋生物

あの「ネッシー」が「クジラのペニス」だった可能性

2022年4月20日(水)12時05分
若道いつき
「ネッシー」で有名な写真

スコットランドのネス湖で撮影され、後に捏造が発覚した「ネッシー」の写真 KEYSTONE / STRINGER/HULTON ARCHIVE

<水面に触手のような不吉な存在を確認したとき、それは「クジラのペニス」だと分子生態学の教授は述べる>

船乗りの間で語り継がれている海獣の目撃談について、ある分子生態学の教授が興味深い見解を示した。

英ダービー大学で教鞭をとるマイケル・スウィート教授は8日、連続ツイートで自説を展開した。「その昔、旅人や探検家は目にしたものを絵に描いていた」──いかにも読ませる一文から始まる彼の投稿には、(20日の時点で)すでに9万5000以上の「いいね!」がついている。

船乗りたちが「水面から触手やエイリアンの一部が現れるのを見た」として、水面下に不吉な生物が潜むイメージが定着するようになったとスウィートは説明を続ける。ここからがユニークだ。「多くの場合、それは単にクジラのペニスだ」と教授は言う。これを裏付けるべく、勃起したシロナガスクジラのペニスと1934年に撮影された有名なネス湖の怪物の写真を並べて見せた。

「クジラは集団で交尾することが多く、一頭のオスがメスと交わっている時、他のオスは周辺を泳いで自分の番を待っている間にペニスを水面から出すことがある」

スミソニアン・マガジンによれば、シロナガスクジラのペニスは動物界でも最大級だ。長さは2.4~3メートル、直径は30センチにもなる。精巣はそれぞれ単独で約70キロの重さがある。

スウィートは先週、オンライン科学誌「ライブ・サイエンス」に対し、ネス湖の怪物についての見解も述べている。

「船乗りたちが海の怪物をどのように描いてきたかを示す一例にすぎない」

ただし、ネス湖にクジラはいないため、スコットランドで伝説の生物を捉えたとされる1934年の写真とクジラの生殖器とは無関係のように思われる。また、「ネッシー」としてよく知られるこの怪物の存在は科学界で広く否定されており、写真も手の込んだトリックであることが分かっている。

それでもスウィートの一連のツイートは、多くのユーザーを魅了している。ユーザーの一人、@JesseKenyaは次のように投稿。

「船乗りたちが描いたあのクラーケン(北欧に伝わる海の怪物)は、自分の番を待つ15頭のオスのクジラだったということか」

スウィートはライブ・サイエンスに対し、世界中を旅する「疲れて、半ば飢餓状態の船乗り」が発見したと主張する他の海獣にも彼の説は依然として成り立つと語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中