最新記事

イルカ

世界各地のイルカに致命的な皮膚疾患が広がる......気候変動の影響と思われる

2020年12月24日(木)17時00分
松岡由希子

イルカは長期間淡水にさらされると皮膚や血液に影響をもたらす...... Credit: Tim Morgan ©Mississippi State University

<アメリカ、オーストラリア各地で皮膚病変がみられるイルカの死亡例が増えている。気候変動がもたらす洪水や暴風雨によって長期間淡水にさらされていたため、と見られている......>

気候変動に関連するとみられるイルカの新たな皮膚疾患が発見された。「淡水皮膚疾患(FWSD)」と名付けられたこの疾患は、気候変動がもたらす洪水や暴風雨、ハリケーン、サイクロンにより大量の雨水が流入することで汽水域の塩分濃度が下がり、ここに生息するイルカの体表の最大70%で斑点状の皮膚病変が現れるというものだ。

米海洋哺乳類センター、豪マードック大学らの研究チームが2020年12月15日、オープンアクセスジャーナル「サイエンティフィック・リポーツ」で一連の研究成果を発表している。

アメリカ、オーストラリア各地で皮膚病変がみられる死亡例

2005年8月に米国南東部を襲ったハリケーン・カトリーナの後、ルイジアナ州ポンチャートレーン湖で、皮膚がひどく損傷したバンドウイルカ約40頭が初めて確認されて以来、ミシシッピ州、アラバマ州などの米国南部や、オーストラリアで、同様の死亡例が確認されている。

固有種で絶滅危惧種のブルナンイルカが約65頭生息する豪州南東部ビクトリア州のギプスランド湖群では、2007年10月末から11月初旬にかけて、体表の広範囲にわたって皮膚病変がみられる2頭が死亡しているのが見つかった。

ギプスランド湖群では、同年6月下旬から7月初旬にかけて、100年に1度の豪雨が続き、塩分濃度が大幅に低下した。11月には別の洪水により、ブルナンイルカの生息域にさらに多くの淡水が注ぎ込まれ、水質が変化し、12月には淡水の藍藻「シネココッカス」が大量に繁殖している。

ミナミバンドウイルカ35頭が生息する豪州西部パース近くのスワン-カンニング・リバーパークでも、2009年に2頭が同様に死亡した。この地域でも、同年6月下旬から7月初旬の豪雨により、川に大量の雨水が流入して塩分濃度が低下している。

010-dolphin-disease-0_1024.jpg

Dr Nahiid Stephens-nature

イルカは水域の塩分濃度の季節変動に適応しているものの、長期にわたって淡水にさらされると皮膚や血液に影響をもたらす。体内の必須イオンやタンパク質を失われて、腫れや潰瘍といった皮膚病変が現れ、藻類や真菌、細菌などによる感染症を引き起こすおそれもある。

ヒトのIII度熱傷に相当し、臓器不全に陥り、やがて死に至る......

研究論文の共同著者でマードック大学の獣医病理学者ナヒド・スチーブンス博士は、オーストラリア放送協会(ABC)の取材において「このようなイルカの皮膚病変はヒトのIII度熱傷に相当するものだ。イルカの血流の電解質を破壊し、臓器不全に陥り、やがて死に至る」と解説している。

気候変動により記録的な豪雨や洪水が世界各地で相次いでいる。研究論文の筆頭著者で海洋哺乳類センターの病理学者パドレイ・ドゥイグナン博士は「今後も、気候変動に伴って、イルカを死に至らしめるような洪水や暴風雨、ハリケーンがより頻発するおそれがある」と警鐘を鳴らしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、米との緊張緩和案拒否 政権幹部ラリジャニ氏

ビジネス

2月貿易収支は573億円の黒字=財務省(ロイター予

ワールド

米がシリア暫定政府にレバノン越境作戦要請、ヒズボラ

ワールド

英ウクライナ、ドローン輸出で連携 首脳会談で合意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 8
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 9
    「目のやり場に困る...」グウィネス・パルトロウの「…
  • 10
    戦争反対から一変...湾岸諸国が望む「イランの脅威」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 8
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中