最新記事

アメリカ社会

医療資源不足で年齢や人種による命の選別が始まった

Idaho Sued Over Using Rationing Medical Care

2021年9月29日(水)21時04分
ローレン・ギエラ
高齢患者イメージ

1歳でも若いほうが命を救われる? Inside Creative House-iStock

<回復見込みに応じて人工呼吸器などの医療資源使用に優先順位をつける新ガイドラインに高齢者の権利擁護団体が反発>

アイダホ州で導入された医療制限は高齢者に対する差別だとして、高齢者の権利擁護団体「ジャスティス・イン・エイジング」が米保健福祉省に調査を要請した。AP通信が報じた。

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、アイダホ州は9月に入って、医療資源を配分するための新たなガイドラインを導入した。人工呼吸器など数が限られている資源は、最も回復の見込みがある患者に優先的に割り当てるものだ。

ジャスティス・イン・エイジングの指摘によれば、新たなガイドラインでは、同じ資源を必要とする患者が2人いた場合、年齢でどちらを優先するか判断する。高齢者差別にあたると主張する。同団体の弁護団は保健福祉省に送った苦情申し立ての中で、アイダホ州の新たな基準によって「高齢者は差別のリスクに直面しており、その差別は死に直結するものだ」と述べた。

以下にAP通信の報道を引用する。

「馬鹿げた高齢者差別につながる」

ジャスティス・イン・エイジングの弁護団は、保健福祉省公民権局のロビンスー・フロブーシー局長代理に宛てた申立書の中で、「アイダホ州の新たな方針は、同じ治療を必要とする2人の年齢差が大きい場合のみに適用される訳ではなく、もし60歳の男性と61歳の男性のように年齢差がきわめて小さい場合にも適用される」と主張した。

弁護団はさらに、こうつけ加えている。「2人の患者が臨床的にきわめて似た状態にある場合、61歳の男性が、もう一人の患者よりも1歳上だというだけの理由で治療を拒否されるという、馬鹿げた高齢者差別につながる」

アイダホ州保健福祉省のグレッグ・スタール報道官は9月24日、ジャスティス・イン・エイジングによる苦情申し立てについては知らなかったと述べた。

スタールはAP通信に宛てたメールの中で、「(アイダホ州の)患者ケアは、治療の義務、資源管理の義務、資源配分の公平性や透明性といった倫理的義務を土台としている」と説明した。「全ての命に価値があり、患者は障害や人種、肌の色や国籍、年齢、性別、ジェンダーや宗教によって差別されないというのが基本理念だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国との貿易協定、来年早々にも署名の可能性=インド

ビジネス

為替、ファンダメンタルズ反映しているとは到底思えず

ビジネス

米高級百貨店サックスが破産法申請検討 月末に巨額債

ワールド

エプスタイン資料、米司法省の対応に反発強まる 議会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中