最新記事

ドイツ

次期ドイツ首相は中国よりアメリカを選ぶ?

Under Olaf Scholz, Germany May Have to Choose Between the U.S. and China

2021年9月29日(水)18時55分
ジャック・ダットン

「しかし、誰がドイツを統治するとしても、冷戦や、冷戦に近い状況はドイツの経済的利益を損なう可能性がある。どの党も、過度に強硬な対中政策には同調はしたがらないだろう」

近年、メルケル元首相は激しく揺れ動く米中関係のなかでうまくバランスをとってきた。首相在任中に12回も中国を訪問しており、回数としては他のどのヨーロッパの指導者よりも多い。こと対中関係に関しては、メルケルの遺産が続くことをクンドナニは期待している。

それ以上に大切なことは、連立政権に加わった政党が、最終的に対中政策を含む多くの政策で妥協しひとつの結論に到達することだ、と付け加えた。

クンドナニによれば、SDPはCDUよりも中国に対してはるかに強硬ということはなく、もしかするとCDUよりも融和的かもしれない。ドイツと中国の関係の変化という点で最大の希望を与えてくれるのは緑の党だが、連立政権で緑の党がどの省庁を担当するにしても、対中政策は首相によって決定される、と彼は言う。

軍事と経済が重要

首相在任中、メルケルは中国の人権問題について公に声をあげることはあまりなかったが、その点はショルツの下でも変わらない可能性が高い、とクンドナニは見ている。

「ドイツには、人権問題については中国政府と内輪で交渉するという対中アプローチの伝統があって、それはゲルハルト・シュレーダーが首相だった時代(1998年~2005年)に遡る。ドイツの政治家はこのほうが効果的だと主張する。メルケルはこのことについてあまり語らなかったため、私はどちらにしても大きな変化は感じていない。ショルツがメルケルよりも率直に人権問題について語るとは期待していない」

ドイツの政治家が人権問題に関する発言はあったとしても「口先だけの言葉」になりがちで、中国とドイツの関係で「肝心なところ」は、軍事および経済的な問題だと、クンドナニは指摘する。

「ドイツの対中経済政策であれ、インド太平洋の安全保障に関する問題であれ、実際に問題になるのはどんな行動をとるかということだ。先日も、ドイツのフリゲート艦がオーストラリアに到着した。この手の行動を増やしていくのか、どのように行うのか、という問題に関しては、政権が変わってもたいした違いはないと思う」

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド東部で4月の最高気温更新、熱波で9人死亡 総

ビジネス

国債買入の調整は時間かけて、能動的な政策手段とせず

ビジネス

カナダ中銀、利下げ「近づく」と総裁 物価安定の進展

ワールド

トランプ氏、コロンビア大のデモ隊強制排除でNY市警
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中