最新記事

ドイツ

次期ドイツ首相は中国よりアメリカを選ぶ?

Under Olaf Scholz, Germany May Have to Choose Between the U.S. and China

2021年9月29日(水)18時55分
ジャック・ダットン
ショルツ

総選挙で社会民主党(SPD)が勝利を収め、首相の座に近づいたオラフ・ショルツ党首 Hannibal Hanschke-REUTERS

<米中の激しい対立のなかでうまくバランスをとってきたメルケルと違い、連立政権を率いる次の指導者は、人権にうるさい緑の党やリベラルの声も聞く必要がある>

アンゲラ・メルケルの後継者として、オラフ・ショルツ財務大臣が最有力視されている。彼が次期首相となった場合、超大国同士で緊張が高まっているアメリカと中国のどちらにつくか、ドイツは厳しい選択を迫られるかもしれない。

9月26日に投開票が行われたドイツ連邦議会選挙(総選挙)の結果、中道左派の社会民主党(SPD)が僅差で勝利をおさめ、党首のショルツは次期政権を担う可能性が最も高くなった。アンゲラ・メルケル首相が所属する保守派のドイツキリスト教民主同盟(CDU)の党首で対立候補のアーミン・ラシェットは最後まで戦う予定だという。

メルケル政権下のドイツはこの二大国の間でうまくバランスを取ることができたが、ショルツの下ではどちらを支持するかについて、困難な選択に直面するかもしれないと、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)欧州プログラムの責任者を務めるとハンス・クンドナニは本誌に語った。

アメリカの大統領に就任して以来、ジョー・バイデンは、民主主義国家と独裁国家の戦いというイデオロギー的な言葉でアメリカの対中政策を再構築した、とクンドナニは言う。

「ドイツや他の欧州の国々は、中国とアメリカのどちらに味方をするか選択を迫られるだろう。時がたつにつれ、その圧力は強まっていく」

アメリカとの微妙な距離

これまでのバイデン政権は、『ノルドストリーム2』(ドイツとロシアが共同開発しているロシア産天然ガスをドイツに運ぶパイプライン)の件にしろ、今秋のメルケル辞任の直前に合意にこぎつけたEUと中国の『包括的投資協定』にしろ、「ドイツの行動をかなり大目に見てきた」と、クンドナニは言う。

「だが、アメリカが突然、イギリス、オーストラリアと組んでAUKUS(9月15日に発足が発表された新たな安全保障協力の枠組み)を発足させたことは、ある意味EU各国がアメリカと同調することにあまり熱心ではなかったことも原因となっている」

ベルリンに本拠を置くメルカトル中国研究所(MERICS)の上級研究員、アリアン・レイマーズによれば、ショルツは、基本的にメルケルと同じ道をたどりつつ、よりビジネス志向で実務的な中国政策を追求するかもしれない。

「だが(連立内閣を率いることになる)ショルツは、特に人権問題に関して、中国にきわめて批判的な緑の党やリベラルな党の立場を統合しなくてはなるだろう」と、レイマーズは本誌に語る。

「SPDはその宣言の中で欧米の同盟関係を『再開』させることを求めているが、ショルツ主導の連立政権は、アーミン・ラシェットが首相となった場合よりも、アメリカとの関係を重視しないだろう」と、彼女は指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソニー、米パラマウントに260億ドルで買収提案 ア

ビジネス

ドル/円、152円台に下落 週初から3%超の円高

ワールド

イスラエルとの貿易全面停止、トルコ ガザの人道状況

ワールド

アングル:1ドルショップに光と陰、犯罪化回避へ米で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中