最新記事

アフガニスタン

タリバン批判報道をしてきた現地ジャーナリストが窮地に

American Newspapers Ask Biden for Evacuation Of Journalists From Kabul

2021年8月17日(火)14時41分
キャサリン・ファン
CNNのワード特派員

カブールから現地ジャーナリストの窮状を訴えるCNNのワード特派員 CNN-YouTube

<米主要3紙がバイデン政権に現地ジャーナリストの国外退避支援を要請。「勇敢な仲間たち」が命の危険にさらされていると訴えた>

アフガニスタンの反政府勢力タリバンが8月15日、首都カブールを制圧して全土掌握を宣言したことを受けて、アメリカの新聞社は一斉に、現地にいるジャーナリストや現地スタッフの救援をジョー・バイデン米大統領に求めた。

ワシントン・ポストの発行人は、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官に宛てて、「ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、およびワシントン・ポストを代表して緊急要請」のメールを送り、バイデン政権に対して「計204人のジャーナリスト、支援スタッフおよびその家族」の国外退避を支援して欲しいと求めた。

カブールにある国際空港には16日早朝、国外脱出を求める大勢のアフガニスタン人が殺到。現地大使館スタッフらを撤収させるための米軍機に群がり、滑走路で機体によじ登ったり、しがみついたりする人が出るなど、大混乱となった。

ワシントン・ポストの発行人であるフレッド・ライアンはサリバンに対して、「危険にさらされている」ジャーナリストたちを、同空港で米軍の管理下に置き、「国外退避用の航空機を待つ間、安全に過ごせるように」して欲しいと要請した。「現在、彼らは危険にさらされており、避難するために米政府の支援を必要としている」と訴えた。

自由な報道を守る姿勢を

ライアンと、ニューヨーク・タイムズの発行人アーサー・サルツバーガー、およびウォール・ストリート・ジャーナルの発行人アルマー・ラトゥールは、その後さらにバイデン政権宛てに手紙を送り、「政府が自由な報道を支持するという明確なメッセージ」を発信するよう、バイデンに呼びかけた。

「アフガニスタンの勇敢な仲間たちは過去20年にわたって、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストとウォール・ストリート・ジャーナルのために尽力し、アフガニスタンのニュースや情報を世界中の人々と共有する手助けをしてきた」と3人は手紙の中で述べた。「今、彼らやその家族たちはカブールで身動きの取れない状態にあり、命の危険にさらされている」

3人の発行人はバイデン政権に対して、これらのジャーナリストが米軍の管理下にあるカブールの空港にスムーズかつ安全にアクセスできるよう支援し、航空機で迅速にアフガニスタン国外に退避できるよう手助けして欲しいと求めた。

アフガニスタンでは、アシュラフ・ガニ大統領が国外に脱出した後に、タリバンが大統領府を掌握。ガニ政権の事実上の崩壊を受けて、カブールは混乱状態にあり、海外の報道機関のジャーナリストやスタッフは、さまざまなリスクに直面している。

地元のジャーナリストたちが取材を続けることは、さらに難しい。現在カブールにいるCNNのクラリッサ・ワード記者は、アフガニスタンのジャーナリスト、特に女性ジャーナリストは「大きな衝撃を受けて」おり、「カブールが大混乱に陥りかねないという深刻な懸念」を抱いていると述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中