最新記事

健康

十分な運動をすることで、睡眠不足による不健康な影響を補うことができる、との研究結果

2021年7月27日(火)18時40分
松岡由希子

運動不足と睡眠不足が健康に複合的な影響を及ぼすことは明らかにされていなかった Lyndon Stratford-iStock

<欧米4カ国4万4370名を対象とする調査で、「運動習慣は、睡眠不足がもたらす健康への悪影響を低減させる可能性」との研究結果が示された>

運動不足と睡眠不足はそれぞれ独立して、死亡リスクや心血管疾患、がんのリスクの上昇と関連する。たとえば、2020年11月に発表された欧米4カ国4万4370名を対象とする研究結果では「運動不足で座位時間が長いと死亡率が高く、座位時間がもたらす死亡リスクは、1日30〜40分の中高強度身体活動(MVPA)によって減衰される」ことが示されている。

健康な生活は、十分な運動と質の高い睡眠の両方によって実現される、ということはよく知られているが、運動不足と睡眠不足が健康に複合的な影響を及ぼすのかどうかについては、これまで明らかにされていなかった。十分な運動をすることで、睡眠不足による不健康な影響を補うことができるという。

運動不足が睡眠不足がもたらす健康への悪影響を増幅する

豪シドニー大学の研究チームは、英バイオバンクの登録者約38万55人を対象に、身体活動レベルおよび睡眠の質と、全死亡リスク、心血管疾患、冠状動脈性心疾患(CHD)、脳卒中、がんといった主要死因死亡リスクとの関連を調べた。

一連の研究成果は、2021年6月29日、医学誌「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディシン」で発表されている。

身体活動レベルや睡眠を含め、対象者の健康状態は、2020年3月まで平均11.1年にわたり追跡された。対象者のうち55%が女性で、平均年齢は55.9歳であった。

対象者の週あたりの身体活動レベルは、運動強度を表わす単位「MET」で表わされ、0〜600METを「低」、600〜1200METを「中」、1200MET以上を「高」と分類する。ちなみに、週600METは、週あたり150分の中強度の運動、または75分以上の高強度の運動に相当し、世界保健機関(WHO)でも推奨されている基準だ。

研究チームの分析によると、睡眠の質のスコアが低いほど、全死亡リスク、心血管疾患および虚血性脳梗塞による死亡リスクが高かった。また、身体活動レベルが高く、睡眠の質が良好な人に比べて、身体活動レベルが低く、睡眠の質が悪い人は、全死亡リスクが57%高く、心血管疾患による死亡リスクが67%、がんによる死亡リスクが45%高かった。身体活動レベルの低さが、低質な睡眠によってもたらされる健康への悪影響をさらに増幅させていると考えられる。

身体活動と睡眠の質の両方をターゲットとすることが重要

一連の研究結果は、観察研究によるため、その因果関係は明らかにされておらず、対象者の自己申告に依拠している点で限界はあるものの、健康増進において、身体活動と睡眠の質の両方をターゲットとすることの重要性を示している。

研究チームは「全死亡リスクや主要死因死亡リスクに対し、睡眠と身体活動には、潜在的な相乗効果がある」とし、「身体活動レベルが低い場合に比べて、身体活動レベルが週600MET以上であれば、低質な睡眠によってもたらされる健康への悪影響を低減できるかもしれない」と考察している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、政策調整でためらいや先回りはせず=レーン専

ワールド

ロシア、経済スパイ理由に外交官追放 英外務省反発

ワールド

高市首相、赤沢氏を重要物資安定確保担当相に任命 対

ワールド

スペイン、米軍機の領空通過を拒否 対イラン攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカートニー」を再評価する傑作映画『マン・オン・ザ・ラン』
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 6
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中