最新記事

リモートワーク

コロナ収束の近未来に、確実に勃発する「リモートvs出社」バトル

WE'RE HEADED FOR A REAL CLASH

2021年6月24日(木)11時41分
ポール・キーガン(ジャーナリスト)

210629p42_re04.jpg

子育て中の社員にとっては子供の世話をどうするかも出社勤務を迷う一因だ PETER TITMUSS-EDUCATION IMAGES-UNIVERSAL IMAGES GROUP/GETTY IMAGES

「オフィス勤務に戻すなんてばかげていると上司には言った。私がしっかり仕事していることは分かっているはず。夜の10時や11時に私からのメールが届いているんだから」

一方で企業幹部の約半数は、リモートワークで生産性が上がるとは考えていない。

バンク・オブ・アメリカのキャシー・ベサントCOO(最高執行責任者)兼CTO(最高技術責任者)はリモートワークの従業員は生産性が低く、ミスを起こしやすいことは自社のデータから明らかだと言う。ミスを見つけてくれる同僚がそばにいないのが理由の1つだ。

リモートワークは長時間労働につながるとの調査結果もあり、燃え尽き症候群も懸念される。昨年秋にマイクロソフトのサトヤ・ナデラCEOは、仕事と家庭生活の切れ目がなくなると「職場で寝ているような気分」になる可能性があると述べた。

リモートで生産性は上がるのか下がるのか

リモートワークの生産性をめぐる議論は今に始まったものではない。リモート推進派がよく引き合いに出すのがスタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授(経済学)らが14年に発表した論文。中国にあるコールセンターでリモートワークを導入したところ、生産性が13%向上し、離職率は半分になったというものだ。

だが反対派は、研究結果は共同作業が必要な職種には当てはまらず、「各人が独立して行うタイプの仕事は外注して、フリーランスの人にリモートでやってもらうべき」という点が明らかになっただけだと主張する。そうすればオフィスの経費も医療保険料などの諸費用も節約できる。

「セールスフォース・ドットコムのような会社がリモートワークを認める場合、オフィスを減らすのが前提ということが多い」と、ペンシルベニア大学経営大学院のピーター・カペリ教授は言う。

「企業側も不動産関連の経費節減効果が、リモートワークで生じ得る生産性や技術革新への打撃を上回るという結論に達するかもしれない。だが正直なところ、経営者もよく分かっていないと思う」

多くの労働者はリモートワークになったおかげで、家族や運動、心身の健康管理、趣味、場合によっては副業のためなど、柔軟に時間を使うことができるようになった。例えばアラバマ大学のウィリアムズは、1日2時間の通勤時間を副業である不動産業に回すことができた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、日中韓首脳宣言に反発 非核化議論「主権侵害

ビジネス

独IFO業況指数、5月横ばいで予想下回る 改善3カ

ワールド

パプアニューギニア地滑り、2000人以上が生き埋め

ビジネス

EU、輸入天然ガスにメタンの排出規制 30年施行
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 5

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 9

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 10

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 5

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 10

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中