最新記事

リモートワークの理想と現実

リモートワーク「先進国」アメリカからの最新報告──このまま普及か、オフィスに戻るか

WORK FROM HOME NATION

2020年5月16日(土)13時30分
ケリー・アン・レンズリ(ジャーナリスト)

新型コロナウイルスの感染拡大で外に出られなくなり、人々の生活は大きく変わった MALCOLM P CHAPMAN-MOMENT/GETTY IMAGES

<新型コロナの影響で「夢の在宅勤務」がいきなり実現、新しい働き方として定着する可能性は──パンデミックが強いる巨大な社会実験の実態とその行方。本誌「リモートワークの理想と現実」特集より>

会社に行かなくなって、もう何日になるだろう──。上下ともスエット姿でノートパソコンを眺めながら、ぼんやりとそんなことを思う。新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、多くの企業が従業員に在宅勤務を命じるようになってからしばらくがたつ。

20200519issue_cover200.jpg最初の数日は最高だった。毎朝、何を着ていくか思い悩まなくていいし、髪の毛がボサボサのままでも問題なし。鏡で自分の姿をチェックする必要さえない。だって会社に行かなくていいのだから!

でも、料理やスポーツと違って、在宅勤務は経験を積むほどうまくなるとは限らない。それでも、多くのビジネスパーソンがいま経験していることは、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)後も、新しい働き方として定着する可能性が高い。

「リモートワークの転機になるかもしれない」と、コンサルティング会社グローバル・ワークプレース・アナリティクスのケイト・リスター社長は言う。「物理的なオフィスがなくなることはないだろう。だが、少なくとも週の一部は、自宅で仕事をする人が増えるだろう」

その変化は、既に統計に表れている。調査会社ガートナーが人事部門の管理職800人を対象に行った調査(3月17日発表)によると、調査対象の企業や団体の88%が従業員に在宅勤務を奨励または義務付けている。G&Sビジネスコミュニケーションズが3月21日に行った調査でも、26%が在宅勤務に切り替えた。

この移行を支えるサービスも花盛りだ。無料音声会議を提供するフリーカンファレンスコールは、アメリカでの利用が2000%増えたという(イタリアでは4322%、スペインでは902%増)。ネットワーク分析会社ケンティクの調べでも、北米とアジアではビデオ会議のデータ量が約200%増えた。

magSR200515_RW2.jpg

米メリーランド州で感染拡大を防ぐため消毒される無人のオフィス ROB CARR/GETTY IMAGES

新型コロナのパンデミックは、社会にも経済にも、巨大な実験を強いていると言っていい。その中では、私たちの誰もが実験台だ。

米人材管理協会(SHRM)の調査によると、新型コロナ問題が起きる前から、69%の企業が、少なくとも一部の社員にリモートワークの選択肢を与えてきた。また、仕事の一部をリモートワークにすることを提案した企業は42%、業務を全面的にリモートワークに切り替えることを提案した企業は27%に上る。

この流れは、3月11日にWHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言して以来、加速している。先陣を切ったのは、マイクロソフトやアマゾンといったIT系企業だが、フォードやフィアット・クライスラー・オートモービルズなどの自動車大手も、世界中の従業員に在宅勤務を呼び掛けた。AT&Tなどの通信大手や、JPモルガンやゴールドマン・サックスといった金融大手も続いた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中