最新記事

リモートワークの理想と現実

リモートワーク「先進国」アメリカからの最新報告──このまま普及か、オフィスに戻るか

WORK FROM HOME NATION

2020年5月16日(土)13時30分
ケリー・アン・レンズリ(ジャーナリスト)

magSR200515_RW4.jpg

礼拝も教会ではなく自宅から参加 PETER BYRNE-PA/AFLO

「新型コロナレベルの世界的な大事件は、少しずつ拡大していたトレンドやシフトを一気に加速させることが多い」と、コンサルティング会社エマージェント・リサーチのスティーブ・キングは語る。

かねてから、多くのオフィスワーカーは在宅勤務の柔軟性を求めてきたし、企業はリモートワークを推進しつつ、オフィスは個室を廃止して、オープンなレイアウトを採用してきた。ビジネス用チャットツールのスラックや、テレビ会議アプリのズーム(Zoom)といったサービスも、既に使われつつあった。

とはいえ、急に現実になったリモトーワークには、まだ不便な部分がある。多くの人は、自宅に仕事専用のスペースがないし、孤立している感覚が大嫌いだ。プライベートと仕事の時間を区別するのも難しい。企業の側でも、技術的なインフラが整っていない場合がある。

社員はサボるに決まってる?

パメラ・ゴンザレス(24)が勤めるフロリダ州オーランドの人材紹介会社は、グーグル・ボイスなど、リモートワークに必要な技術環境を整えるとともに、設備に関する問題を扱う部門を強化した。それで、実際に在宅勤務をしてみてどうなのか。

「いい面と悪い面がある」とゴンザレスは言う。「自分でも驚いたことに、自宅で仕事をしたほうがずっと生産的だ。誰かに監視されている気がしないし、2時間ほどものすごく集中的に働いて、休憩して、仕事に戻るといった働き方ができる。オフィスでは気が散ることが多い」

その一方で、「プライベートの境界線がなくなる」と、ゴンザレスは語る。「在宅勤務初日の夜、10時にコンピューターの前に戻って仕事を始めてしまった。もちろんボーイフレンドはいい顔をしなかった」

管理職にとっても、リモートワークは意識改革を強いているとゴンザレスは語る。新型コロナ問題が起きる前に、リモートワークを推進していない企業がその理由として挙げたのは、「社員がサボると思うから」が多かった。チームの生産性低下を懸念する管理職も少なくない。

ところがG&Sの調査では、最近在宅勤務を始めた労働者のうち、オフィスで働いているときよりパソコンに向かっている時間が長くなったと答えた人は4分の1を超えている。また、ハーバード大学の昨年の調査では、好きな場所で仕事をする自由を与えられた人々のほうが生産性が高いという結果が出ている。

自分でリモートワークをやってみて、得心する管理職も多いと、リスターは言う。「家に居ながらにして自分がどのくらいよく働いているか、どれほどの時間を仕事に投じているか分かれば、部下への信頼という問題の解決につながる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

リクルートHD、求人情報子会社2社の従業員1300

ワールド

トランプ氏の出生権主義見直し、地裁が再び差し止め 

ワールド

米国務長官、ASEAN地域の重要性強調 関税攻勢の

ワールド

英仏、核抑止力で「歴史的」連携 首脳が合意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 6
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中