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専門家でさえ初めて見るクジラの貴重映像...海の神秘に迫ったJ・キャメロン

They’re Just Like Us

2021年5月21日(金)18時40分
キャスリーン・レリハン

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水中写真家のスケリーはクジラの生態を間近で捉えた BRIAN SKERRY

キャメロンが来年公開予定の『アバター2』を撮影する一方で、スケリーは現地で間近に、クジラの姿を映像に収めた。その中には、人間を不安にさせるものもある。

「クジラを観察すれば、人類の文明がもたらすストレスや打撃にやがて気付く」と、キャメロンは話す。いい例が、ナショナル・ジオグラフィックのダイバーが、漁具に絡まって溺れそうなシャチの救助活動を手伝う場面だ。

ナレーションによれば、釣り糸が絡まったせいで死ぬクジラは1日当たり1000頭近く。「この巨体のオスシャチにとって、ダイバーを殺すことは簡単。でも、シャチは理解しているようです......」。あの異世界の住人のような声音で、ウィーバーは解説する。

「ほとんど全ての文明活動がクジラの害になる」と、キャメロンは言う。水質汚染も、資源開発に伴う地震探査や軍事用ソナーが引き起こす水中騒音もそうだ。

音によって世界を把握し、エコーロケーション(反響定位)を用いて獲物を捕らえるクジラにとって、水中騒音は極めて有害だ。クジラの座礁の多くには水中騒音が関係していると、キャメロンは語る。聴覚にダメージを受けたクジラは獲物を探すことも、周囲を知覚することもできなくなり、座礁してしまう。

「人間は唯一の存在ではない」

「社会的絆で結ばれているクジラは、1頭が座礁すると助けに向かう。その結果、群れのクジラが全滅することになりかねない」

「人は愛情を感じず、大切に思わないものを守ろうとしないものだ。人々に気に掛けさせることが変化のための第一歩だ」と、キャメロンは言う。「人類文明には根本的な戦いが存在する。テーカー(奪う者)とケアテーカー(保護する者)の戦いだ。前者は自然を搾取の対象で、利益の源泉と見なす。自分はどちらかと自問してほしい。自分はどちらに票を投じるのか、と」

キャメロンに言わせれば、答えは白黒がはっきりしたものとは限らず、おそらく「ちょっと灰色」だ。

「こうした問いをリトマス試験紙にして決断を下す人は責任ある地球市民だ。この巨大な宇宙船に、不運にも人間と乗り合わせた市民であるクジラのことを気に掛けている」

スケリーは『クジラと海洋生物たちの社会』によって、海洋保護に対する意識が高まればとも願っている。

「クジラも愛情や遊び心、共感性を持ち、子孫のために多くのことをし、伝統を受け継いでいると知れば、自然界がどれほど特別かを理解し、人間は唯一の存在ではないと悟るきっかけになる」

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