最新記事

動物

[動画]クジラがサメの襲撃から人間を救った

2018年1月11日(木)14時00分
デーナ・ダビー

ザトウクジラのジャンプは有名。知的な「遊び」という説も Mike Hutchings MH-REUTERS

<長年クジラの保護活動をしてきた女性ダイバーも初めて見る驚きの行動で、迫りくるイタチザメの脅威から必死に彼女を遠ざけた>

「人間の最良の友」という言葉は、犬だけでなくクジラにもあてはまるかもしれない。ザトウクジラがサメの攻撃からダイバーを守ったのだ。

救われたダイバーは海洋生物学者だが、ザトウクジラのこうした行動を見たのは初めてだという。幸いにも、この奇跡的な出来事は一部始終、水中カメラにとらえられていた。

驚くべき出会いが起きたのは、南太平洋に浮かぶクック諸島の主島ラロトンガ沖。下の動画でおわかりのように、体重25トンの巨大なクジラが海洋生物学者のナン・ハウザーに近づいてきて、彼女に寄り添うように泳ぎ始めた。と、突然クジラはひれでハウザーを押しのける。

とっさに何が起きたのか分からなかったと、ハウザーは言う。体長4.5メートル程のイタチザメがすぐそばにいて、クジラが自分を守ってくれたと気づいたのは、しばらく経ってからだ。無事に船に戻ったハウザーは、動画のラストで、クジラに「私もあなたを愛している」と呼び掛けている。

「クジラが近づいてきたときは、何をしたいのか分からなかった。10分程私にまとわりつき、押しのけ続けた。とても長い時間に思えた。ちょっと怪我もした」と、ハウザーは英オンライン紙インディペンデントに語った。

守るつもりが守られた

クジラは「私を頭やお腹、背中の上に乗せようとしたり、巨大な胸びれで私を抱え込もうとした」と、ハウザー。28年間水中でクジラを調べてきたが、こんな行動は見たことがないという。

ザトウクジラは「歌うクジラ」として知られる。仲間とのコミュニケーションのために水中で発する複雑で物悲しげな音は歌のようで、ときには何時間も続く。何を訴えているのかは分からないが、求愛コールの一種だろうと科学者たちは考えている。

巨大な体で水上に飛び出すザトウクジラの「ブリーチング」は壮観だ。体に付いた寄生虫を振り落とすための行動という説もあるが、理由ははっきり分かっていない。知能の高いクジラのこと、最近の調査では、遊びとして楽しんでいる可能性も指摘されている。

かつては絶滅が危惧されたこともあったが、個体数は着実に回復。今では大半の個体群が絶滅危惧種リストから外されている。

クジラが本当にハウザーを守ろうとしたのかどうかは確かめようがないが、彼女にとってこの出会いが忘れがたいものになるのは間違いない。「28年間クジラの保護に取り組んできたが、まさかクジラに守ってもらえるなんて夢にも思わなかった」




ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米ミネソタで州議員が銃撃受け死亡、容疑者逃走中 知

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 

ワールド

再送-米ロ首脳、イスラエル・イラン情勢で電話会談 

ワールド

イスラエル、イランガス田にも攻撃 応酬続く 米・イ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中