最新記事

コロナ禍

全米各地で子どもの成績低下が深刻に コロナで長引く在宅学習が影響

2021年4月4日(日)16時03分

米国内の学校では、成績や試験の点数は、休校措置がとられた後に各地で目に見えて低下している。写真はオンライン授業を受けるリリアナさん。ケンタッキー州ルイビルで2月撮影(2021年 ロイター/Amira Karaoud)

米国内の子どもたち数百万人と同じように、ブロディ・コットン君も、1年以上、学校の教室に足を踏み入れていない。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の大流行のせいで、ブロディ君は7年生としての1年間をカリフォルニア州カールスバッドの自宅のソファで過ごさざるを得なかった。そのせいか、「A」と「B」ばかりだった優秀な成績は、先学期は「D」を1つ、「F」を2つという残念な結果に終わった。

「F」の1つは、選択科目の「デザインとモデリング」だ。本来なら教室で実際に3Dプリンターを使ってみる内容になるはずだったが、自宅ではアイスキャンディの棒を使った模型を作るのが精いっぱいだった。

母親のクリスティン・カリナンさん(42)は、「これまで息子の教育で何か問題を抱えたことはなかった」と語る。彼女はシングルマザーとして、息子の学校教育とエレクトロニクス企業でのフルタイムの仕事をやりくりしている。

ブロディ君の友人たちも悩みは一緒だ。サンディエゴの北方30マイルに位置するカールスバッドは、白人を主体とした小規模だが裕福な街である。学区のデータによれば、2020─21年度の1学期にこの街の生徒がもらった「F」の数は、昨年度同学期の3倍以上に増えたという。

学力低下、単位落とす生徒が急増

成績や試験の点数は、休校措置がとられた後、全国各地で目に見えて低下しており、特に有色人種の学生で際立っている。これは複数の州に関する評価、各地メディアの報道、各州の教育省、個別に取材した12の学区から得られた暫定データをロイターが検証したことにより判明した。

多くの学区では、米疾病予防管理センター(CDC)の指針に基づき、遅くとも次の秋までには生徒を完全に呼び戻す予定である。だが教育関係者・親たちにとって、生徒たちの学習を本来の軌道に戻すまでには、越えなければならない高いハードルが残っている。

国内最大規模の学区のいくつかから得られたデータによれば、単位を落とす生徒の数が急増している。ラスベガスを含むネバダ州クラーク郡学区、シカゴ公立学校群、フォートローダデールを含むフロリダ州ブロワード郡公立学校群などだ。クラーク郡は3月、シカゴでは1月に生徒の通学を再開しており、ブロワード郡では10月以来対面での指導を行っている。

全国で5番目に規模の大きいクラーク郡学区では、2020─21年度の1学期、全成績に占める「F」の割合は、昨年度同学期の6%に対し、13%に増加した。生徒数26万人を数えるブロワード郡学区では、昨年秋の2学期における全成績のうち、12%が「F」だった。昨年度同学期は6%である。

州全体で行われる標準学力検査も、パンデミック期間中は延期される例が多かったが、限定的に実施された結果はやはり思わしくない。ノースカロライナ州の教育委員会が開示した結果によれば、昨年秋、州統一の期末試験を受けた州立高校の生徒の半数以上が数学と生物学で「不可(not proficient)」の評価を受けた。

最も不振だったのは数学で、州のデータによれば、通常は9年生で履修する「数学I」の試験で66.4%の生徒が「不可」となった。昨年度は48.2%である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、債券発行で計40億ユーロ調達 応募倍率25倍

ビジネス

英財務相、予算案に関する情報漏えい「許されず」

ワールド

中国外務省、英国議会からの情報収集「興味なし」

ワールド

水産物輸入停止報道、官房長官「中国政府から連絡を受
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中