最新記事

コロナ禍

全米各地で子どもの成績低下が深刻に コロナで長引く在宅学習が影響

2021年4月4日(日)16時03分

コンサルタント会社マッキンゼー・アンド・カンパニーは12月、25の州で小学校の生徒を対象に実施される算数とリーディングのスキルを評価する「i-Ready」試験の結果を分析した。同社では、数学においては、白人の生徒の場合、パンデミックがなかった場合の学習進度に比べて1─3カ月の遅れが生じていると推測している。有色人種の生徒の場合、遅れは3─5カ月に広がる。

ジョンズ・ホプキンス大学教育学部のジョナサン・プラッカー教授は、学習の遅れを取り戻すには少なくとも2年かかると考えている、と話す。

「何とか方法を見つけて生徒たちが遅れを取り戻しはじめられるよう支援しなければ、ギャップはますます広がっていくだろう」とプラッカー教授は言う。

成績低下の原因は

成績には判定者の主観が影響する場合もあり、必ずしも理解度を反映しているとは限らない。生徒が授業に出席しなかったために「F」がつく場合もある。だが最近では、悪い評点が家庭でも学区でも懸念を引き起こしている。1つには、そうした成績が生徒の自信をそぎ、卒業を遅らせ、大学進学への展望が狭まってしまうからだ。

シカゴのテンプル・ペインさん(48)は12月、学校長の職を辞した。娘のトリスティンさんが、これまで「A」を続けて来た7年生の数学で「D」を取ってしまったからだ。

「娘にとっては大ショックだった」とペインさんは言う。「いま彼女は『自分は出来ない子だ』という態度になっている」

シカゴ学区では、小・中学生17万2000以上のうち14.3%が、今年度の2学期に数学で「D」か「F」を付けられている。昨年度に比べ4.6ポイントの増加である。

マイノリティや低所得層にとっては、勉強のための決まったスペース、安定したインターネット接続、大人による持続的な監督といった学習に適した家庭環境を用意することがさらに困難になる場合がある。

また不利な境遇にある家庭は、COVID-19による影響を不釣り合いに受けやすくなっており、子どもたちは学習面に限らず困難を抱えている。

ケンタッキー州のジェファーソン郡公立学校区では、今月、2020年3月以来となる対面学習が一部再開されたが、9万6000人の生徒のうち約63%が、無料・低額給食制度を利用している。今年度前期、この学区で「不十分」と表現される落第点を取った生徒の数は、昨年前期に比べて2倍以上増加した。

リリアナ・アンダーソンさん(8)は、ジェファーソン郡で低額給食制度を利用している生徒の1人だ。ルイビルで育児指導員として働いていた母親のロレイン・アンダーソンさん(42)によれば、リリアナさんはパンデミック以前から読み書きには苦労していたというが、昨年秋にはその不振がさらに深刻になった。1年生のリリアナさんには基本的なコンピュータースキルが身についておらず、オンライン授業には向いていなかったからである。

ロレインさんは、今学期は自身でリリアナさんを教えることを選び、学用品を揃える資金を集めようとクラウドファンディング「ゴーファンドミー」のページも開設した。

「娘を対面授業に戻してやりたいが、(その前に)彼女に期待される学力をつけさせたい」とロレインさんは言う。「学校が再開されたからといって、そのまま娘を2年生のクラスに放り込むわけにはいかない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

25・26年度の成長率見通し下方修正、通商政策の不

ビジネス

午前のドルは143円半ばに上昇、日銀が金融政策の現

ワールド

米地裁、法廷侮辱罪でアップルの捜査要請 決済巡る命

ビジネス

三井物産、26年3月期は14%減益見込む 市場予想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 3
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中