最新記事

米中対立

米軍のRC-135U偵察機が中国沿岸に最接近、あと47キロまで

U.S. Spy Plane Sets Record With Close Flight Off Chinese Coastline

2021年3月24日(水)16時00分
ジョン・フェン
米軍のRC-135U 偵察機

中国沿岸に最接近した米軍の「RC-135Uコンバット・セント」偵察機 U.S. AIR FORCE

<日本や東南アジア諸国の領土・領海を脅かす中国に、「最大限の圧力」作戦を展開するアメリカ>

3月22日、米軍の偵察機が中国沿岸の防衛線にこれまでになく接近し、約47キロメートルまで近づいた後で引き返したことを、北京の研究者らが明らかにした。

北京大学のシンクタンクである「南海戦略態勢感知計画(SCSPI)」がツイッターで述べたところによれば、この米空軍の偵察機「RC-135Uコンバット・セント」は、南シナ海で活動する米軍偵察機3機のうちの1機だという。

同機のルートを示す現地時間22日午前の飛行追跡データでは、台湾南部とフィリピンのルソン島を隔てるバシー海峡を一直線に飛行したことがわかっている。

レーダーシステムで情報を収集するRC-135Uはその後、中国南東部の福建省から広東省にかけての海岸線に接近してから引き返した。

この飛行により、同機は中国から約47キロメートル内に侵入したとSCSPIは述べ、公開情報にもとづけば、米軍偵察機が中国の海岸線に接近した例としては「最も近接した」と表現した。

とはいえ、沿岸部から航空機までの距離の測定に関して、公開されている飛行追跡データがどれだけ正確なのかは不明だ。

中国本土周辺における米軍の活動を追跡しているSCSPIによれば、コンバット・セントは、「AE01D5」というトランスポンダー・コードを使用していたという。

同機は、22日に南シナ海で活動していた3機の偵察機の1機で、ほかの2機は「P8(ポセイドン)」と「EP-3」だったとSCSPIは述べている。

来年は米豪に加え英独も参加

米空軍のRC-135Uは、2021年になってから、すでに何度か中国メディアに登場している。3月には、国営ネットワークの「中国中央電視台」(CCTV)も、沖縄の嘉手納空軍基地から飛び立った同機の、黄海と東シナ海での偵察任務を追跡していた。

SCSPIは3月12日、南シナ海における2020年の米海軍及び米空軍の活動に関する年次報告書を公開した。同報告書のまとめによれば、米軍の偵察機は2020年、1000回近くにわたって紛争海域に飛来したという。

米軍の重爆撃機と戦艦は、中国が領有権を有する島々の周辺で、記録的な数の任務を実施し、その過程で中国に「最大限の圧力」をかけたとSCSPIは述べている。

SCSPIは2020年10月本誌に対し、米軍は2009年以降、「この海域での活動頻度を大幅に上げている。水上艦艇の出現頻度は60%以上増加し、年間およそ1000シップデイ(延べ展開日数)に達している」と述べていた。

「空に関しては、1日あたり平均3〜5機の戦闘機を南シナ海に送り込んでおり、年間の接近回数は合計1500回を越える。これは、2009年と比べてほぼ2倍だ。そのほとんどは偵察機だ」とSCSPIは続けた。

米軍が中国周辺海域で存在感を強めている背景には、中国軍が戦闘能力を強化し、日本や台湾の近海でほぼ毎日のように偵察飛行を実施している状況がある。

アメリカの主要同盟国も、南シナ海での「航行の自由」作戦に参加している。2020年にはオーストラリア海軍の戦艦が参加した。2021年には、ドイツとイギリスの戦艦が同海域を航行する予定になっている。

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 山に挑む
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月29日号(7月23日発売)は「山に挑む」特集。心と身体に健康をもたらすクライミングが世界的に大ブーム [PLUS]世界トレッキング名峰5選

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:低迷ヘルスケア株、浮上の鍵は米薬価政策巡

ワールド

再送-アングル:米のロシア産原油購入国への「2次関

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック最高値、米EU貿易

ワールド

トランプ氏、スコットランド到着 英首相やEU委員長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:山に挑む
特集:山に挑む
2025年7月29日号(7/23発売)

野外のロッククライミングから屋内のボルダリングまで、心と身体に健康をもたらすクライミングが世界的に大ブーム

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 3
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や流域住民への影響は?下流国との外交問題必至
  • 4
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 5
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 6
    機密だらけ...イラン攻撃で注目、米軍「B-2ステルス…
  • 7
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「電力消費量」が多い国はどこ?
  • 9
    アメリカで牛肉価格が12%高騰――供給不足に加え、輸入…
  • 10
    羽田空港に日本初上陸! アメックス「センチュリオン…
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人口学者...経済への影響は「制裁よりも深刻」
  • 3
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞の遺伝子に火を点ける「プルアップ」とは何か?
  • 4
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 5
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 6
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 7
    「カロリーを減らせば痩せる」は間違いだった...減量…
  • 8
    父の急死後、「日本最年少」の上場企業社長に...サン…
  • 9
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 10
    約558億円で「過去の自分」を取り戻す...テイラー・…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 10
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中