再送-アングル:米のロシア産原油購入国への「2次関税」、実施の公算小か

トランプ米大統領がロシア産原油を購入している国々からの輸入品に100%の追加関税を課すと警告していることについて、実行に移す可能性は低いとの見方が出ている。2017年11月撮影(2025年 ロイター/Jorge Silva)
(見出しの誤字を修正して再送します)
[ワシントン 25日 ロイター] - トランプ米大統領がロシア産原油を購入している国々からの輸入品に100%の追加関税を課すと警告していることについて、実行に移す可能性は低いとの見方が出ている。
トランプ大統領は今月、ロシアが侵攻を続けるウクライナと50日以内に和平合意に同意しない限り、ロシアからの輸出品の購入国に100%の「2次関税」を課すと表明した。
しかし、実際に2次関税を課せば、政治的に打撃となるインフレ圧力を強めることになりかねない。
また、米国は3月、制裁対象としているベネズエラ産原油の購入国に追加関税を課すと発表。しかしそのような警告は、とりわけ中国への効果は限定的だったほか、ベネズエラからの原油輸出が急増したにもかかわらず、追加関税を課していない。
コンサルティング会社ラピダン・エナジー・グループの地政学的リスクサービス部門ディレクター、フェルナンド・フェレイラ氏は「2次関税は、(トランプ)政権がロシアに対して使う手段としてはあまりにも粗雑かもしれないとの見方をしている」とし、「市場から日量450万バレル超を排除する最終手段を選び、ロシア産原油を輸入しているという理由で他国との商業関係を断つ覚悟があるならば、原油価格の急騰と世界経済の崩壊のリスクを背負い込むことになる」と指摘した。
米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)シニアフェローのクレイ・シーグル氏は、ロシア産原油を輸入する国々に100%の関税が完全に適用されれば世界的な供給量を削減し、価格が上昇する可能性があると指摘した。
シーグル氏は、2次関税の適用にアナリストとトレーダーが懐疑的な理由を2つ挙げ、「第1にトランプ氏は原油価格高騰に非常に敏感であり、そのような結果を回避したいと考えているからだ」と言及。第2にトランプ氏は交渉で手を縛られるような厳格な枠組みに従うよりも、2国間合意の成立を好むからだとして「米国の貿易相手国の一部は原油トレーダーと全く同じように、単なるパフォーマンスだと無視するかもしれない」と語った。
シーグル氏はまた、トランプ氏が導入した特に鉄鋼への関税引き上げが、世界最大の産油国となっている米国の原油掘削業者にとって商品価格上昇を招く可能性があるとの見方を示した。これは来年の連邦議会中間選挙のタイミングで原油価格が上昇する可能性があることを意味する。
アナリストらは、トランプ氏が率いる共和党は議会下院、上院ともに僅差で過半数を維持しているため、中間選挙期間中に原油価格が急騰する措置を避ける可能性が高いと予想している。
2次関税を導入するとけん制した2日後、トランプ氏は1バレル当たり64ドルの原油価格は素晴らしい水準で、さらに少し下げるように政権として努めていると訴えた。その上で、原油価格が低水準なのは「インフレが抑制されている理由の一つだ」と言及した。原油価格はその後も1バレル当たり60ドル台半ばで推移している。
こうした中、ホワイトハウスのアンナ・ケリー副報道官は「トランプ氏はロシアのプーチン大統領に対して極めて強硬な姿勢を示しており、既存の制裁を維持しながらも、あらゆる選択肢を残したまま対応してきた。最近では(ウクライナとの戦闘の)停止に合意しない場合、厳しい関税と制裁を課すとプーチン氏を脅した」とコメントした。
制裁を管理する財務省の報道官も「トランプ氏が表明したように、ロシアは戦闘終結の合意に50日以内に同意しなければ、米国は厳しい2次制裁に踏み切る用意がある」と述べた。