アングル:軽飛行機で中国軍艦のデータ収集、台湾企業が安保で官民連携目指す
軽飛行機が台湾東部沖の青い海の上空を飛びながら、機体下部に搭載した米国製の高性能レーダーで中国の軍艦を追跡し、データを収集──。こうした情報を台湾安全保障当局に提供する監視飛行事業を売り込んでいる民間企業がある。写真は台湾の台東でテイクオフの準備をする安捷航空の機体。10月13日撮影(2025年 ロイター/Ann Wang)
Yimou Lee Fabian Hamacher Ann Wang
[台東(台湾) 1日 ロイター] - 軽飛行機が台湾東部沖の青い海の上空を飛びながら、機体下部に搭載した米国製の高性能レーダーで中国の軍艦を追跡し、データを収集──。こうした情報を台湾安全保障当局に提供する監視飛行事業を売り込んでいる民間企業がある。パイロット訓練やチャーター便を運航する安捷航空(本社:台北)だ。
中国は日常的に台湾の周辺空域や海域に接近しており、台湾は対応するための負担がますます大きくなっている。
台湾当局は「社会全体の回復力」構想の一環として、民間企業や研究グループなどの機関に対して通信と物流の後方支援、サイバー防衛の強化、さらには監視と情報収集に貢献する可能性を含めてより積極的な役割を果たすよう呼びかけている。
台湾は2030年までに防衛費を域内総生産(GDP)の5%に引き上げ、新たな米国製兵器の「大規模」購入を含む400億米ドルの追加予算を導入する計画だ。
<今、動かなければ>
安捷航空は当局の防衛強化計画への参画を目指す。すでに防衛契約を結んでいる企業と異なるのは、自社で監視作業を実行しようしている点だ。
同社のウィルソン・カオ会長は「中国の演習はますます頻繁になり、距離もどんどん台湾に近づいている。今この時点で動かなければ、もうチャンスは来ないかもしれない」と語った。
安全保障分野での官民連携は、米国などでは一般的だが、台湾にとって新しい試みだ。
台湾国防部(国防省)はロイターに対し、中国の活動を効果的に監視できており、現時点で協力計画はないとしながらも「公民協力に関する議論を歓迎する」と表明した。台湾海巡署(沿岸警備隊)は偵察能力の強化に取り組んでおり、無人機(ドローン)の活用を優先してから段階的に有人機を導入する予定だ。
安捷航空は台湾域内のチャーター便や離島との間の緊急医療搬送を請け負う。約4億台湾ドル(約1307万米ドル)を費やして、イタリア製11座席プロペラ機「テクナムP2012トラベラー」を米国製の合成開口レーダー搭載の機体に改造した。このレーダーは0.09平方メートルの物体まで検知できる性能を持つ。
<法整備が課題>
専門家は民間機の偵察活動を合法化する法的基盤の整備が必要だと指摘し、中国軍の攻撃に抵抗力がないリスクを懸念する。
台湾の最有力軍事シンクタンク「国防安全研究院」研究員の蘇紫雲氏は「偵察機は強制力の行使を伴う。強制力を民間部門に委ねられるかどうかは法的議論が重要となる」との見解を示した。
軽飛行機の偵察は軍用機運航のコストの10分の1程度に抑えられる可能性がある。しかし、安捷航空の医療チャーター便を巡っては今年6月、中国沿岸に隣接する金門島に向かって飛行中、中国軍機に3日連続で接近されており、中国のいやがらせ行為が強まる状況に直面する民間航空機の安全性を巡る懸念も生じている。





