最新記事

東シナ海

米爆撃機2機が中国の防空識別圏に異例の進入

U.S. Warplanes Foray Into China Airspace As PLA Jets Disturb Taiwan

2020年11月19日(木)17時30分
ジョン・フェン

中国の識別圏に進入した米軍のB1B爆撃機と同型機 U.S. Air Force photo/ REUTERS

<米大統領選後の混乱に乗じて台湾空軍を消耗させる中国軍に警告>

11月17日、米軍の超音速爆撃機2機が中国の防空識別圏(ADIZ)に進入した。米大統領選後の混乱を受けて同地域の情勢が不安定化するなか、中国をけん制する狙いがあるとみられる。

航空機追跡サイト「Aircraft Spots」がツイッターに投稿した情報によれば、米空軍のB1B爆撃機、MAZER01とMAZER02はグアムにあるアンダーセン空軍基地から出撃。台湾北東にある東シナ海上空のADIZに進入した。KC135ストラトタンカー空中給油機2機(PEARL21およびPEARL22)も出動し、空中で給油を行ったという。

通常、航空機が他国の防空識別圏を飛行する場合には、その国の航空当局に事前に連絡を入れることとされている。だが防空識別圏については各国が独自に設定しているもので、国際法上の規定はない。

中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」上に出回っている動画によれば、米軍機によるADIZ進入を受けて、中国空軍は軍用機2機を出動させた。1分程度の動画の中には、MAZER01と東京の航空管制官との間の無線通信らしき音が入っている。そこにさらに別の2人の声が入り、中国空軍の軍用機を名乗った上で、米軍機2機に対して「即座に退去する」よう命令している。


大型爆撃機を投入したことの意味

台湾の国防部がウェブサイト上で明らかにしたところによれば、これと同じ日、中国軍のY8哨戒機、2機が台湾南西部の航空識別圏に進入。台湾が複数の戦闘機を緊急発進させて警告すると、引き返したという。台湾国防部には11月から、中国軍機による領空侵犯への対応を専門とする部署が設置されている。また同国防部によれば、18日にも電子戦機1機を含む複数の中国軍機が台湾のADIZに進入した。

北京を拠点とするシンクタンク「南海戦略態勢感知計画(SCSPI)」は10月、本誌に対して、アメリカは2009年にバラク・オバマ前大統領が就任して以降、中国上空に派遣する偵察機の数を2倍近くに増やしていると指摘。またSCSPIが11月12日に発表した最新の報告書の中によれば、米空軍は2020年に入ってから、従来型の偵察機と民間の偵察機の両方を使って、黄海や台湾海峡、東シナ海と南シナ海における中国の軍事活動を監視している。

だが台湾在住の複数のアナリストは、米軍が17日に中国のADIZに進入させたのは、通常型の偵察機とは異なる、米空軍が所有する中でも特に大型の爆撃機であり、このことには特別な意味合いがあると指摘。中国指導部が米大統領選後の混乱を利用するのを阻止しようという、ドナルド・トランプ米政権の狙いが背景にあるとみている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 9
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中