最新記事

米中対立

中国軍機18機が台湾識別圏に侵入、台湾は17回スクランブル 米高官訪問けん制か

2020年9月18日(金)19時11分

中国政府は、台湾海峡付近で軍事演習を開始した。写真は4月に北京で撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

台湾国防部は18日、中国軍の戦闘機18機が同日、台湾海峡の中間線を越えて台湾の防空識別圏に入り、台湾空軍機がスクランブル(緊急発進)したと発表した。台湾では前日から米政府高官が訪問しており、18日は蔡英文総統と会談する予定。中国国防省は18日から台湾海峡付近で軍事演習を開始したと発表していた。台湾総統府は中国に自制を求めた。

中国は米国と台湾の関係強化の動きに神経をとがらせている。

米国務省のクラック次官(経済成長・エネルギー・環境担当)が17日に台湾に到着。18日に蔡総統と会談し、19日には李登輝元総統の告別式に参列することになっている。中国外務省は17日、クラック次官の台湾訪問に関し「必要な対応」をする方針を示していた。

中国国防省の任国強報道官は18日の会見で、人民解放軍の東部戦区が参加し台湾海峡の近くで演習を実施していると明らかにし「台湾海峡における現状への対応で、中国の国家主権と領土の一体性を守るためだ」と説明した。

台湾は純粋に中国国内の問題であるとし、外国の介入を拒否する姿勢を示した。

任報道官は「最近、台湾の民主進歩党(民進党=与党)と米国が結託を強め、しばしば問題を引き起こしている」と指摘。「台湾を利用して中国をコントロール」しようとしたり、「外国人を頼りに独立」しようというのは考えが甘く、いずれ行き詰まるとし「火遊びする者はやけどする」と述べた。

中国人民日報傘下の有力国際情報紙、環球時報の胡錫進編集長は、中国版ツイッター、微博(ウェイボー)上で、軍事演習は必要となれば台湾を攻撃するための準備だとし「米国務長官や国防長官が台湾を訪問すれば、人民解放軍の戦闘機が台湾上空に飛来し行動する」と述べた。

台湾総統府の報道官は会見で、台湾海峡や周辺地域で最近見られる中国の好戦的行動は中国の国際社会におけるイメージに良くない影響を与えかねないと述べた。また、市民に対しては軍が状況を十分把握しているとして、心配しないよう呼び掛けた。

台湾国防部によると、18日に台湾海峡の中間線を越え台湾の防空識別圏に入ったのは、中国空軍のH-6爆撃機2機、J-16戦闘機8機、J-10戦闘機4機、J-11戦闘機4機の計18機。

台湾空軍機が緊急発進するとともに、ミサイル防衛システムで中国軍機の動きを監視していたという。国防部は地図で中国軍機の飛行経路を示した。

台湾の自由時報紙はこれより先、台湾空軍機が18日朝、中国空軍機に対して4時間にわたりスクランブルを17回行ったと報道。台湾東海岸沿いの花蓮の基地でF16戦闘機にミサイルが搭載される写真も掲載した。

8月にアザー米厚生長官が台湾を訪問した際も、中国軍機が一時中間線を越えて台湾の防空識別圏に入っていた。


*情報を追加しました。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・パンデミック後には大規模な騒乱が起こる
・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死


20200922issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中