最新記事

米外交

最善の対中政策は「何もしないこと」だ

Let China Hamper Itself

2021年3月8日(月)12時00分
サルバトーリ・バボネス(シドニー大学社会学准教授)
中国国家主席の習近平

習近平(中央)の下、中国政府は全てをアメリカのせいにしているが CARLOS BARRIA-REUTERS

<自らの挑発的態度により孤立を深める中国。「一帯一路」は暗礁に乗り上げ、もはやそのプロパガンダは聞き流されるだけ。だからこそ、バイデン政権は「不干渉」で中国の自滅を促すべきだ>

中国はこの20年間に、国際関係の脇役から中心になった。21世紀に入った頃と比べ、中国経済が5倍に膨れ上がったことを考えれば、こうした変化は驚きとは言えない。

だが中国が新たに築いた対外関係の多くは、当初こそ希望に満ちていたが、今では敵対関係に変貌している。

パキスタンや北朝鮮といった国とは同盟関係を維持しているものの、経済成長の継続を大きく助けるはずの先進諸国との関係は冷え込む一方だ。

これは中国にとって問題だ。中国の約束はもはやまともに受け取られず、そのプロパガンダは聞き流されるだけ。「一帯一路」経済圏構想の多くの事業は暗礁に乗り上げ、中国が南シナ海上の領海線として設定した九段線を支持する向きはほとんどない。

中国が昨年、香港での統制を大幅に強化したことを受けて、西側諸国は香港脱出を目指す専門職の移住プログラムを続々と提供している。

多くの国が中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)や中興通訊を通信網から排除し、インド、ベトナム、台湾、韓国、日本は中国の潜在的脅威に対抗すべく軍事力の近代化を進める。

こうした状況のなか、ジョー・バイデン米大統領にできる最善の行動は何か。答えは、何もしないことだ。

中国は既にあちこちに「赤い波」を広げようとしている。中国が攻撃的な外交政策を続けるなら、バイデンは「巧みな無行動」という方針によって、さらに中国を孤立させることができる。今は、少し気楽に構えて静観する時だ。

中国に圧力をかけ過ぎて、彼らがもはや失うものはないと攻撃に出るような状況に追い込むのは、バイデンにとって最悪の選択肢だ。

アメリカは1941年に同様の行動に出た。拡張主義を取る日本に対して、中国を軍事的に支援し、禁輸措置や在米資産凍結で日本に圧力をかけたのだ。

当時の日本は上昇気流ではなく、下り坂にあった。中国での戦況が行き詰まり、モンゴルではソ連に行く手を阻まれ、アメリカの経済制裁に首を絞められた日本の指導部は、短期決戦を目指して無謀にも真珠湾を攻撃した。

じわじわと敗北に追い込まれる事態を阻止するには、それ以外に道がなかったからだ。

その結果、当然ながら日本は決定的かつ血まみれの敗北を喫した。とはいえ現在、極端な強硬派を除けば、中国の「敗北」を望む者はいない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政権、10%の代替関税発動 15%への引き上げ方

ビジネス

米CB消費者信頼感指数、2月は91.2に上昇 雇用

ワールド

ウクライナ大統領「独立守った」、ロ侵攻から4年 G

ワールド

米、重要鉱物価格設定にAI活用検討 国防総省開発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 6
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 7
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中