最新記事

ヘルス

長寿日本一の長野県、秘訣は「適度な毒」 県民が実践する病気知らずの食事法とは

2021年2月15日(月)11時50分
古川 哲史(医学博士・東京医科歯科大学副学長) *PRESIDENT Onlineからの転載

男性は1990年、女性は2010年に1位に輝いてから長寿1位の座を守る長野の秘密とは? *写真はイメージです kohei_hara - iStockphoto


長寿日本一といえば沖縄県をイメージする人が多いかもしれない。だが、現在の最長日本一は男女共に長野県だ。一体いつ頃から、どうしてそうなったのだろうか。東京医科歯科大学副学長の古川哲史氏は「その成功の秘密は、食生活の改善・充実を中心とした『予防医療』にある」という----。

※本稿は、古川哲史『最新研究が示す 病気にならない新常識』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

50年で最長寿県となった長野県

日本では、毎年、県別に寿命の長さが発表されています。最長寿県はどこだと思う? ときいたら、沖縄県じゃない? という答えが最も多かったのですが、確かに少し前までは、沖縄県が最長寿県として有名でした。

ですが、今では沖縄県は男性の場合は47都道府県中30位(女性は3位)です。これは沖縄県民の生活様式の急速な欧米化、特にファストフードの普及と車社会の影響が大きかったようです。

最長寿県は、意外なことに長野県です。しかも男性は1990年、女性は2010年に1位に輝いてから長年その座を譲っていません。

長野県は、もともと長寿県だったわけではありません。昭和40年の統計を見ると、男性の寿命は第9位、女性が第26位です。特に脳卒中による死亡率は1965年は全国1位、その前後数年をみても常にワースト3に入っています。

長野県は、四方が山に囲まれており、冬になると雪に閉じ込められるので、野沢菜に代表されるように保存食が重宝されてきました。食品を保存するためには、塩分を多く使います。塩分が細菌などの微生物の繁殖を防ぐからです。

そのため昭和40年代(1965~1974年)の長野県では、塩分摂取量が全国で4番目に多く、高血圧・脳卒中による死亡率が高かったのですが、その頃、圧倒的に寿命が長かったのが沖縄県でした。50年の間に、沖縄県と長野県の立場は完全に逆転してしまったのです。

一体なぜなのでしょう。

健康で現役の高齢者

長野県の医療(「長野モデル」)を、今の日本のお手本にすべき理由が、もう一つあります。それは昭和40年代の長野県と、今日の日本の状況に重要な共通点があることです。

65歳以上を高齢者といいますが、全人口に占める高齢者の割合により、社会を「高齢化社会」(高齢化率7%以上~14%未満・以下同)、「高齢社会」(14~21%)、「超高齢社会」(21%以上)と、呼び分けます。

日本は2007年に、全人口に占める高齢者の割合が21%を超え、世界で初めて超高齢社会になりました。

昭和40年代の長野県をみると、若者は仕事を求めて都会に出てしまい、全国に先駆けて高齢化が進んでいて、65歳以上の住民が23%に達する「超高齢社会」となっていました。

今の日本全体の縮図が、50年近く前の長野県には、既に出来上がっていたのです。それにもかかわらず、50年後の現在、最長寿県となっているのです。

実は、長野県は長寿なだけではなく、高齢者の就業率が26.7%で、これも全国1位です。この数字は全国平均を大きく上回っており、高齢者の就業率が最も低い沖縄県の約2倍にも達します。

すなわち、寿命が長いだけではなく、健康寿命(自立して生活をおくれる年齢のこと)も長く、男女共に全国1位なのです。

健康で長生きという、超高齢社会を迎える日本の、まさにお手本なのです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:米レートチェック観測で市場動揺、円キャリ

ワールド

金現物が5000ドル突破、最高値更新 地政学的な緊

ワールド

米国務長官とイラク首相が電話会談、イランとの関係な

ワールド

英政府、「英国版FBI」を創設へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 6
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 7
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 8
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 9
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 10
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中