最新記事

感染症対策

入院できないコロナ自宅療養者が急増 重症化を察知するパルスオキシメーターは必須アイテムだ

2021年1月17日(日)13時10分
筒井 冨美(フリーランス麻酔科医、医学博士) *PRESIDENT Onlineからの転載

新型コロナウイルス感染症の重症化の目安となる血液中の酸素飽和度を測定できる「パルスオキシメーター」が注目を浴びている。 BackyardProduction - iStockphoto

新型コロナウイルス感染症の重症化の目安となる血液中の酸素飽和度を測定できる「パルスオキシメーター」が注目を浴びている。麻酔科医の筒井冨美氏は「医療現場で患者の容態把握のための重要な医療機器で以前は1つ数万円以上しましたが、コロナ禍で数百~数千円になって家庭用にネットや家電店で販売されています」という――。

酸素飽和度とパルスオキシメーター

「パルスオキシメーター」という医療機器をご存じだろうか。ネットニュースやネット通販、書籍では下記のように"別名"で呼ばれることがある。

・サチュレーションモニター
・経皮的酸素飽和度計
・血中酸素測定器
・SpO2(エスピーオーツー)測定器

用語が入り乱れているが、これらはすべてパルスオキシメーターのことだ。

新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)関連のニュースでは、「酸素飽和度90」といった表現がしばしば登場するが、この「酸素飽和度」の意味を正しく理解している人は少ないのではないか。

血液中には、酸素を体中に運搬するヘモグロビンという色素がある。酸素飽和度とは「ヘモグロビンの何%が酸素と結合しているか」を示す指標である。医学書などでは「SpO2(エスピーオーツー:パルスオキシメーターで測定した場合の酸素飽和度)」と記されることも多い。

健康成人の正常値は96~100%だが、喫煙者・高齢者・肥満者などは約2~5%低下していることが多い。そして90%以下となると「低酸素血症(ハイポキシア)」と呼ばれて、酸素投与などの治療対象となることが多い。

酸素を結合したヘモグロビン(酸化ヘモグロビン)は鮮やかな紅色であり、酸素を結合しないヘモグロビン(還元ヘモグロビン)は暗赤色となる。低酸素血症となった患者が「顔色が悪い」のは、暗赤色の還元ヘモグロビンが増えるために唇や頬などがくすんだ色調になるからである。

このヘモグロビンの「酸素の有無で色調が変化する」性質を利用して、光を透過させることによって酸素飽和度をリアルタイムに測定できる機器がパルスオキシメーターである。

従来は、わざわざ動脈から採血しないと測定できなかった(この場合はSaO2表記される)データが、簡便に得られるようになり、酸素飽和度は「血圧・脈拍・体温・呼吸数に次ぐ第5の生体サイン」とも言われている。ちなみに、このパルスオキシメーターは1974年に日本の医療機器メーカーである日本光電(本社:東京都新宿区)によって発明された。

開発者である青柳卓雄氏はコロナ第1波渦中の2020年4月に亡くなり、ワシントンポスト紙などで世界に報じられた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中