最新記事

中国

「危険で脆弱な超大国」独裁国家・中国のトリセツ

China Is Both Weak and Dangerous

2021年1月13日(水)17時00分
マシュー・クレイニグ(米スコウクロフト戦略・安全保障センター副所長)、ジェフリー・チミノ(同センター・グローバル戦略イニシアティブ副責任者)

中国は国家再生というビジョンの下で結束を図る(2020年9月、北京で開かれた新型コロナ感染対策表彰大会) CARLOS GARCIA RAWLINS-REUTERS

<元米国防総省中国部長が新著で解き明かすのは、世界規模の野望を持ちながら、弱さも秘めた現代中国の姿だ。アメリカと同盟国は、その矛盾を理解せよ>

ソ連崩壊から約30年が過ぎた今、アメリカの覇権争いの相手は中国だ。習近平(シー・チンピン)政権の発足以来、中国はより強く自己主張する路線を推し進め、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)でアメリカとの競争は激化した。

表面的に見れば、中国は自信に満ちている。経済は回復基調にあり、軍の現代化やテクノロジー開発の加速、外交的影響力の拡大が進む。

その中国をより詳しく分析し、能力と戦略目標を検証した、アメリカン・エンタープライズ研究所アジア部門責任者ダン・ブルーメンソルの新著『中国の悪夢──衰退する国の壮大な野望』は、タイムリーで洞察に満ちている。

本書が光を当てるのは、現代中国の矛盾だ。中国は積極的で野心的な大国であり、同時に弱さを秘めている。その弱さが中国の台頭をなきものにする、あるいは衰退を早めることになりかねない。

ブルーメンソルが中国研究を始めたのはかなり前、米国防総省中国部に勤めていた時代のことだ。以来、中国に起きた数々の変化について、本書は理解を深めてくれる。

中国が求めるのは地域的覇権か、グローバルシステムの支配か。専門家の見方は割れるが、本書が出す答えは明快。中国の野望は世界規模だ。

その根拠として挙げるのが、2017年に開催された中国共産党第19回全国代表大会で習が行った報告。中国は今世紀半ばまでに「世界有数の軍事力を擁する豊かな社会主義現代化強国」になると、習は宣言している。

「中国は自国の影響力を中心とし、自国のルールに基づく新たな世界秩序を率いることを望んでいる」ため「地政学的支配を求める闘いはアジアにとどまらない」と、ブルーメンソルは記す。

だが世界を視野に入れる中国の野望の裏には、弱さが隠れている。中国共産党自身が「国内外での安全保障環境は実際のところ、圧倒的なまでに困難だと評価している」と、本書は指摘する。

恐怖の帝国を生み出す

中国政府は経済・社会・政治的課題の数々に直面している。例えば、急ピッチで進む高齢化、経済への国家統制の再強化を原因とするGDP成長率の鈍化、農産物生産や国民の健康を阻む環境問題の悪化、イノベーション創出の停滞で「中所得国の罠」に陥るという将来像、分離主義や国内不安の懸念だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中