最新記事

イスラム教

「ワクチンにもハラル認証が必要」 副大統領務めるイスラム教指導者 命か宗教か、選択迫られるインドネシア

2020年9月9日(水)21時32分
大塚智彦(PanAsiaNews)

世界最多のイスラム教徒を擁するインドネシアでは、宗教界からワクチンにもハラル認証が必要との声が出た。写真はワクチンのイメージ画像。4月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

<感染拡大を防ぐ切り札として各国が期待を寄せるワクチンだが、意外なところに利用の壁が──>

人口約2億7000万人の約88%がイスラム教徒という世界最多のイスラム教徒人口を擁するインドネシアで、蔓延する新型コロナウイルスの予防策として期待されるワクチン開発が、中国の製薬会社と現在鋭意進められている。

そのワクチン開発をめぐって副大統領の要職にあるイスラム教指導者が「ワクチンの成分がイスラム教徒の人々が体内に取り込むに際し、禁忌とされる成分がないかどうか調べ、お墨付きとなる宗教令を発布する準備をするように」と、イスラム教組織に対して指示したことが明らかになった。

現在インドネシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国中、感染者はフィリピンに次いで2番目に多く、9月8日には20万人を突破した。また死者ではASEAN最悪の記録を更新し続けており、ジョコ・ウィドド政権も効果的なコロナ感染対策を打てず手詰まり状態が続いている。

開発中のワクチンの成分調査へ

そんななか、2021年初めからの使用を目指して現在インドネシアの製薬会社が中国の製薬会社などと共同でコロナウイルスに有効とされるワクチンの開発を進め、現在はフェーズ3の臨床試験を実施している最中と伝えられている。

こうしたおり、マアルフ・アミン副大統領が8月初旬に自らも幹部を務めるイスラム教組織「イスラム聖職者(ウラマ)評議会(MUI)」に対して「コロナワクチンの成分が、イスラム教徒として体内に取り込めるハラル(イスラム法で許されたものという意味)であるかどうかに関する宗教令(ファトワ)を出す準備に着手するように」と伝えていたことがわかったのだ。

これは地元紙テンポが伝えたもので、8月5日にオンラインで実施された「COVID19パンデミックとその法的影響におけるMUIファトワの役割」と題するセミナーの基調講演で、アミン副大統領がファトワ準備をMUIに求めたと伝えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中