最新記事

イスラム教

「ワクチンにもハラル認証が必要」 副大統領務めるイスラム教指導者 命か宗教か、選択迫られるインドネシア

2020年9月9日(水)21時32分
大塚智彦(PanAsiaNews)

アミン副大統領は講演の中で「ファトワはガイダンスを提供し、真のファトワは常に(イスラム教徒の)利益に向けられ、困難に直面しないためのものである」とファトワの意義を強調して、ワクチンの成分がイスラム教徒にとって「適切かどうか」を調査して、「ワクチン接種が禁忌に当たるかどうか」の判断基準を示すべきだとの考えを表明したものだ。

ファトワがもつ意味とその効果

インドネシアでは食品や飲料そして化粧品など、口あるいは皮膚を通して体内に摂取される飲食物、化粧品、歯磨き粉、薬品などについて、イスラム教徒が禁忌とする「豚肉、豚肉の成分に由来する物質、アルコール成分」などが含まれていないかどうかを検査・調査。摂取可能な製品には「ハラル・マーク」がMUIから発行され、イスラム教徒はその「ハラル・マークの有無」を確認して購入することが一般化している。

近年この「ハラル・マーク」は飲食物や化粧品、薬品などからさらに拡大、冷蔵庫などの白物家電、さらに物流倉庫などにまで適用されている。

たとえば冷蔵庫の場合、豚肉やアルコールを一切冷蔵、冷凍したことがない製品という意味合いであり、倉庫は「一切禁忌物を収納しない倉庫である」という認識で「ハラル・マーク」が目立つように掲示されて販売、提供されているのだ。

過去には「はしか」のワクチンにNO

イスラム教組織「MUI」は2018年当時、使用が検討された「はしか」ワクチンに対して「豚の成分、人間の細胞成分に由来する物質が含まれており、イスラム教徒は摂取することが禁じられている」として同ワクチンを禁忌とする「ハラム(禁じられているもの、の意味)」に認定した経緯がある。

今回インドネシアでも猛威を振るっている新型コロナウイルスの感染対策に関して、これまでにMUIは「個人用防護具を着用している医療関係者のイスラム教徒としての祈りの手順」や「健康プロトコルに従ってコロナ陽性患者を治療、監視する際の手順」「家でのパンデミック下での祈りの手順」等のファトワを出している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾最大野党主席、中国版インスタの禁止措置は検閲と

ビジネス

ドイツ景気回復、来年も抑制 国際貿易が低迷=IW研

ワールド

台湾、中国の軍事活動に懸念表明 ロイター報道受け

ビジネス

市場動向を注視、為替市場で一方向また急激な動きもみ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 8
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 9
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中