最新記事

日本政治

ポスト安倍 菅義偉官房長官、観光と地方経済重視 「携帯値下げ」が看板政策

2020年9月2日(水)18時06分

自民党総裁選への出馬を正式表明する見通しの菅義偉官房長官(写真)は、新型コロナウイルスを巡って、一貫して感染拡大の防止と経済回復の両立を目指す姿勢を示してきた。写真は都内で8月撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

2日に自民党総裁選への出馬を正式表明する見通しの菅義偉官房長官は、新型コロナウイルスを巡って、一貫して感染拡大の防止と経済回復の両立を目指す姿勢を示してきた。自身が主導した「GoToキャンペーン」の成果を強調しており、コロナ禍で傷ついた地方経済を観光で復活させたいという思いがにじむ。

総務相だった菅氏の看板政策の1つは、携帯電話料金の見直し。ここ2年間、携帯キャリア各社に強く値下げを迫っている。消費税の減免には反対の立場だ。

米中対立が先鋭化する中、外交・安全保障は日米同盟を重視。香港問題では中国に厳しい発言をしている。

◎コロナ対策と地方再生

総裁選で各候補が真っ先に問われるのが、新型コロナ対策。菅官房長官はかねてから「感染リスクをコントロールしながら、経済社会活動のレベルを段階的に引き上げる」と語っている。

政権をずっと支えてきた菅氏は、検査を拡充するとともに医療体制のひっ迫を防ぐために感染症の類型を見直すなど、安倍首相が辞任表明時にまとめた対策パッケージを引き継ぐ可能性が濃厚だ。

同時に経済回復も最優先に掲げ、とりわけ旅行・観光産業を後押しして疲弊する地方経済を支える政策を打ち出すとみられる。地方再生は菅氏の重点政策だ。これまでもふるさと納税の導入や、農林水産業の改革で実績を残してきている。

菅氏は8月26日のロイターとのインタビューで、再度の緊急事態宣言は避けたい意向を示した上で、「現在も飲食、宿泊などサービス業を中心に厳しい状況が続いている。政府としては、事業を継続させて雇用を守ることを最優先に考えている」と述べている。

◎アベノミクスほぼ踏襲か

経済政策も、日銀との協調を強めた安倍政権の政策から大きな変更はなさそうだ。菅氏は「日銀とは早め早めに連携している」と発言。「財務省と金融庁、日銀による情報交換会合についても、日本が何を考えているのか、分かりやすいメッセージを出せるという意味で有効だ」としている。

総裁選の焦点の1つである消費税については、社会保障のために必要な財源だとし、減免に消極的な姿勢を示している。

◎携帯料金さらに引き下げ

第1次安倍内閣で総務相だった菅氏は、携帯電話料金の引き下げに力を注いできた。2018年に「携帯電話料金は4割値下げできる余地がある」と表明して以来、携帯キャリア各社は値下げ圧力に直面している。菅氏は各社の利益率がなお高止まりしていることに言及しており、さらなる値下げを求める見通しだ。

手数料の高さが指摘される携帯キャリアの変更については、ウェブサイトを通じて番号持ち運び制度(MNP)を無料で申請できるようする考えだ。

◎中国の軍事力に強い警戒

菅氏は米国との同盟関係を重視。安倍政権のもとで関係改善の兆しが見えてきた中国に対しては、香港や尖閣諸島(中国名:釣魚島)の問題を巡って厳しい姿勢で臨んでいる。

2日の閣議後会見では「中国の国防政策や軍事力の動向は極めて重大な関心事項」だと述べ、「東アジアの安全保障に直結する。望ましい安全保障環境を確保し、この地域の透明性を含む軍備管理の在り方をしっかり議論し、米国とも緊密に連携していきたい」とした。

香港が国家安全維持法を制定したことについては、「1国2制度に対する信頼を損なう」と批判している。習近平国家主席が今春訪日するタイミングだったが、菅氏は「国賓としての来日の具体的な日程調整をする段階にはない」と語っている。

自民党内と国家保障局内で意見の集約が進んでいる新たな安全保障政策については、憲法9条を逸脱する考えがないことを強調している。菅氏は「現行憲法の範囲内で専守防衛を前提にしっかり、自民党提言などの考え方を踏まえて政府内で引き続きしっかり議論していく必要がある」と述べている。

(中川泉 編集:久保信博)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・風雲急を告げるポスト安倍レース 後継候補の顔ぶれは?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・「アベノミクスは買い」だったのか その功罪を識者はこうみる
・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる


20200908issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年9月8日号(9月1日発売)は「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集。主導国なき「Gゼロ」の世界を予見した国際政治学者が読み解く、米中・経済・テクノロジー・日本の行方。PLUS 安倍晋三の遺産――世界は長期政権をこう評価する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米上院、ミラン氏をFRB理事に承認 CEA委員長職

ワールド

豪経済見通し、現時点でバランス取れている=中銀総裁

ワールド

原油先物横ばい、前日の上昇維持 ロシア製油所攻撃受

ワールド

クックFRB理事の解任認めず、米控訴裁が地裁判断支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中