最新記事

総裁選

ポスト安倍争いに菅官房長官も参加 岸田氏、石破氏と三つ巴の争いへ

2020年8月30日(日)12時11分

かねてから名前が挙がる石破茂元幹事長(左)と岸田文雄政調会長(右)に加え、安倍政権の要である菅義偉官房長官(中央)が有力候補として急速に存在感を増している。REUTERS/Yuya Shino/Kim Kyung-Hoon/Katsumi Kasahara

安倍晋三首相の辞任表明を受けた自民党総裁選は行方が混沌としている。かねてから名前が挙がる岸田文雄政調会長と石破茂元幹事長に加え、安倍政権の要である菅義偉官房長官が有力候補として急速に存在感を増している。誰を党の顔に据えて次の総選挙を戦うのか、衆議院解散の時期をにらみながら党内の駆け引きが続きそうだ。

総裁選の方式が結果に影響

結果が見通しにくい自民党総裁選は、安倍首相が石破氏に逆転勝利した2012年9月以来。18年の総裁選は、現職の安倍首相の勝利が確実視されていた。

28日に辞任を表明した安倍首相は、以前から後継として岸田氏に期待してきた。第2次内閣の7年8カ月、岸田氏は外相、自民党政調会長とずっと要職を任されてきた。にもかかわらず、世論調査で岸田氏の支持率は安定して低い状態が続いている。

安倍首相の盟友で、岸田氏を推す自民党の甘利明税調会長は25日、ロイターとのインタビューで、「岸田氏としては存在感をしっかり示すことができるかどうか次第で、この1―2カ月が正念場だ」と語っている。本人も知名度の低さを認識しているようで、このほど著書を出版、テレビへの露出も増やしている。

岸田氏は28日に新潟県で講演。地元紙・新潟日報によると、「総裁選については私もぜひ挑戦したい」と語った。

逆に世論の支持が高いのが、過去2回の総裁選で安倍首相に敗れた石破元幹事長だ。党内でも草の根の人気を集め、2012年の総裁選では地方議員票や党員票で安倍氏を上回った。しかし、国会議員だけが投票できる2回目の決選投票で逆転を許した。

石破氏は28日夜のテレビ番組で、再び総裁選へ立候補することに意欲を見せたが、ネックになりそうなのが今回の総裁選出方法だ。自民党の規定では、緊急を要する場合、国会議員票をより重視する簡素な両院議員総会で決めることが可能。複数の国内メディアは、ポスト安倍を決める総裁選はこの簡素化方式で、9月15日を軸に行われると報じている。

石破氏は28日に出演した別のテレビ番組で、「わが国の命運を決する選挙になるのだから、あまり簡便な方法を取るべきではない」とけん制した。

こうした中で有力候補として急浮上してきたのが、屋台骨として安倍政権を支えてきた菅官房長官だ。新型コロナウイルス渦中に、大きな政策変更は好ましくないとして名前が挙がる。

2019年4月に新元号「令和」を発表して若年層にも顔と名前が浸透した菅氏は、同年5月、官房長官としては異例の外遊に出て訪米した。ペンス副大統領に迎えられ、ホワイトハウスで厚遇を受けた。

安倍首相は今年7月発売の月刊誌「Hanada」のインタビューで、菅氏について「有力な候補者の一人であることは間違いない」と語った。

菅氏自身は、首相という職務に関心を示していない。26日にロイターのインタビューに応じた菅氏は、首相の座を目指すかどうか問われ、「考えたこともない」と一蹴している。「菅氏は調整型の人材。総理向きではないことは本人が最も熟知している」(自民党のベテラン議員)との指摘もある。

しかし菅氏はロイターとのインタビュー以外にも、ここ最近たびたびメディアに出演し、アベノミクスや新型コロナ対策について成果を強調している。自民党内には「公明党や維新(の会)とのパイプが太く、次期衆院選でこれらの党との協力を強化する上で最適」などの声が根強い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中