最新記事

教育

政府が教育にカネを出さない日本に未来はあるか

2020年6月17日(水)16時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

学費が高い理由は、国がカネを出さないから pong-photo9/iStock.

<日本は教育費の公的負担率が極端に低く、そのぶん家庭に負担を強いている>

新型コロナの影響で、学生の生活が苦しくなっている。保護者の収入が減り、自分のアルバイトも切られるというのが現状だ。1日の生活費が200円、大学生の5人に1人が退学を検討しているという、悲痛なニュースも目につく(高等教育無償化プロジェクトFREEの調査結果)。

感染症によって学生の生活が脅かされる、退学まで考えないといけないというのは、大学の学費が高額な日本ならではの問題と言えるかもしれない。今は国立でも年間50万円超、私立だと100万円近くの学費がかかる。この負担を重いと思っている家庭は多いはずだ。

筆者は10年間、入試難易度では「中の下~下」の私大で教えたが、「授業料が高い」という学生の声をよく聞いた。このレベルの私大だと、家計に余裕がなく、たくさんアルバイトをして、奨学金もフルに借りて必死に学費をまかなっている学生が多い。

「学費が高いのは、大学の先生が高給をもらっているからではないか」と発言する学生もいたが、実際にはそのようなことはない。学費が高い理由は、国がカネを出さないからだ。2016年の統計によると、日本の高等教育費用の負担内訳は公費が30.6%、家計負担費が52.7%となっている。公費より私費負担が多いが、どの国でもこうなのではない。<図1>は、主要7カ国の比較図だ。

data200617-chart01.jpg

日韓と米英は家計負担型、仏と北欧は公費負担型と分類できるだろう。フィンランドでは、家計負担割合がゼロだ。この国の大学の学費は原則無償だそうだが、それがデータに表れている。

OECD(経済協力開発機構)加盟国のなかで見ると、日本の52.7%という家計負担割合はチリに次いで高い。この数値が50%を超える、つまり高等教育費の半分以上が家計負担でまかなわれている国は、チリ、日本、コロンビアの3カ国だけだ。OECDの平均値が23.4%であることから、日本の高等教育がいかに家計に負担を強いることで成り立っているかが分かる。

【話題の記事】
自殺かリンチか、差別に怒るアメリカで木に吊るされた黒人の遺体発見が相次ぐ
日本の「生ぬるい」新型コロナ対応がうまくいっている不思議

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

立公新党「中道改革連合」と命名、衆院選で消費減税掲

ワールド

中国とカナダが首脳会談、習主席「関係改善へ協力継続

ワールド

米、国境警備の漸進的進展「容認できず」 メキシコに

ビジネス

三菱商事、米企業のシェールガス事業を約1.2兆円で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑について野次られ「中指を立てる」!
  • 2
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    イランの体制転換は秒読み? イラン国民が「打倒ハ…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    年始早々軍事介入を行ったトランプ...強硬な外交で支…
  • 8
    母親「やり直しが必要かも」...「予想外の姿」で生ま…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 8
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 9
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 10
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中