最新記事

人種差別

自殺かリンチか、差別に怒るアメリカで木に吊るされた黒人の遺体発見が相次ぐ

Family of Second Black Man Found Hanging From a Tree Is Waiting for Answers

2020年6月15日(月)15時45分
クリスティーナ・チャオ

黒人男性が吊るされて死んでいた木の根元に花を捧げる抗議者たち(ロサンゼルス、6月13日) Ringo Chiu-REUTERS

<白人警官に黒人が射殺されて新たな怒りに燃えるアメリカで、木に吊るされた黒人男性の死体が連続して発見され、慎重な捜査が進んでいる>

カリフォルニア州ロサンゼルス郡の保安官事務所は6月11日、木に吊るされた遺体で発見されたパームデール市の黒人男性ロバート・フラーの死因に関する捜査状況を発表。その後、近くのサンバーナーディノ郡の当局が、同じように木に吊るされた状態だった別の黒人男性の遺体について、捜査を進めていることを認めた。

サンバーナーディノ郡保安官事務所の広報担当者ジョディ・ミラーは本誌にあてた文書で、38歳のアフリカ系アメリカ人男性マルコム・ハーシュの遺体が、5月31日にビクタービル市立図書館とホームレス収容所の近くにある樹木から吊り下げられた状態で発見されたことを確認した。

「詳細な死因の調査が行われている」と、ミラーは述べた。「犯罪を示唆する兆候は現場にはなかった。死因と死の様態についてはまだ明かされていない」

ミラーは6月14日午後、本誌に対して、調査はまだ進行中であると語った。「追加情報は、わかりしだい発表される」

ハーシュの死から2週間後にあたる13日、ハーシュの家族は長びく捜査に対する懸念を表明する声明を発表した。保安官事務所からの当初の発表にもかかわらず、家族はハーシュの自殺は疑わしく、犯罪に巻き込まれた可能性が高いと考えている。

<参考記事>Black Lives Matter、日本人が知らないデモ拡大の4つの要因

自殺は考えられない

「本人をよく知っている人々の見たところでは、落ち込んでいるようではなかった」と、ハーシュの家族は訴える。「マルコムを知る人はみな、首を吊ったと聞いてショックを受けた。誰も自殺だとは思っていない。遺体の発見現場に居合わせた人々も同様だ」

「自殺だという説明は、本当とは思えない」と、家族は付け加えた。「私たちは、慰めになる言い訳ではなく、正義を望んでいる」

ハーシュの家族によると、死亡時のハーシュの首にはUSBコードが巻き付けられ、「シャツには血がついていた」という。

「身体に抵抗した跡や、目に見える負傷を示す証拠もなかったようだ」と、家族は言う。「死に方というものはたくさんあるが、このところの人種問題の緊張を考えると、今の時期に黒人男性が木で首を吊って自殺したなんて、絶対に受け入れられない」

ハーシュの遺体が発見されたのは、5月25日に白人警察官に首を抑えられて死亡したジョージ・フロイドの事件が起きた後、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大事)」運動の抗議者数十人がサンバーナーディノ郡西部の都市ビクタービルに集まって来た日だった。

<参考記事>米シアトルで抗議デモ隊が「自治区」設立を宣言──軍の治安出動はあるか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中