最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナのパンデミックで出稼ぎ労働者排斥 アラブ経済の未来に影

2020年5月13日(水)11時45分

新型コロナウイルスで湾岸諸国の経済活動は停滞し、この地域を支える外国人出稼ぎ労働者は居場所をなくしつつある。写真は失業した外国人労働者。5月7日、サウジアラビアのリヤドで撮影(2020年 ロイター/Ahmed Yosri)

サウジアラビアで人気のテレビ司会者ハレド・アル・オケイリー氏は、「国内労働者よりも外国人労働者を一時解雇することは民間企業の国家的な義務である」と発言し、国内労働人口の多くを出稼ぎ労働者が占めていることに「現実的な危険」があると警告した。

毎日出演するトークショーでオケイリー氏が発したコメントは、中東の湾岸諸国経済の屋台骨となっている外国人労働者3500万人が直面するジレンマをずばり言い当てている。新型コロナウイルスの感染拡大と原油価格暴落を背景に企業が人員を削減し、各国政府が自国民の雇用・賃金を守ろうと動くなかで、彼らは湾岸諸国にとどまるべきなのか、帰国すべきなのか。

国際労働期間(ILO)は具体的な数字は示さないながらも、2008─09年の金融危機や、湾岸諸国の主力輸出品である原油の価格が急落した2014─15年にときよりも、外国人労働者の出国が多くなるものと予想している。

たとえばオマーン。金融危機を受けた2010年に外国人労働者は34万人以上減少した。世界銀行のデータによれば、この年オマーンの経済成長率は1.3ポイント低下している。

今回、湾岸諸国は外国人労働者を帰国させる手段を用意しようと試みているものの、多くはセーフティネットもないまま足止めを食らっている。

この地域にある各国の大使館などのデータによれば、アジア系を中心に、数十万人の移民労働者がすでに帰国に向けた申請を済ませている。湾岸諸国では、過密状態の地域で生活する低所得の外国人労働者のあいだで新型コロナウイルスの感染が広がっている。

「とどまる意味がない」

パキスタンとインドは、すでに湾岸諸国から自国民を退避させる動きを始めた。エジプトはクウェートから航空機で自国民を帰還させようとしている。クウェートでは不法在留者収容施設でエジプト出身者による暴動が発生、治安部隊が鎮圧した。

ILOの上級専門家リスザード・チョルウィンスキー氏は、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カタールから出国する外国人労働者が「非常に多くなる可能性がある」と話す。

UAEで帰国申請を済ませたパキスタン人は6万人。その1人であるファーマンさんは2カ月前、スクールバスの運転手という職を失った。新型コロナの封じ込め措置として、複数の教育センターが閉鎖されたためだ。

ドバイのアル・クオズ工業地区にある共同住宅の前、街灯にぼんやりと照らされた通りに立つファーマンさんは、「自分の国に帰りたい。仕事もないのにこの国にとどまる意味はないから」と話す。


【関連記事】
・緩むとこうなる?制限緩和を試みた韓国にコロナのしっぺ返し
・東京都、新型コロナウイルス新規感染28人 10日連続で2桁に抑える
・韓国・梨泰院のクラスター、新型コロナ感染102名に ゲイの濃厚接触者の追跡がネックに
・緊急事態宣言、14日めどに専門家意見を踏まえ可能なら解除=官房長官

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、民主5州の育児・家族支援凍結 100

ワールド

マクロスコープ:中国の対日禁輸、政府内に動揺 「企

ワールド

豪CPI、11月は前月比横ばい コア高水準続き利上

ワールド

中国、台湾独立派3人に制裁 親族の入境も禁止
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 7
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 8
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 9
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中