新型コロナのパンデミックで出稼ぎ労働者排斥 アラブ経済の未来に影
専門職の労働者にも影響が
新型コロナによって窮地に追い込まれている労働者は、ブルーカラーだけではない。専門的な資格を持つ労働者も影響を免れない。
「インターネットでたくさんの職に応募したが、どれも期限が過ぎてしまった」と語るのは、エジプト系米国人の建築士ナダ・カリムさん。ドバイで新たな仕事に就くはずだったが、その企業が採用を凍結してしまった。
「収入がなくても2─3カ月はここで粘れるが、それ以降は母国に戻らないとやっていけない」
レバノン系カナダ人のセイマーさんは、サウジアラビアの広告代理店で働いていたが、賃金の支払いがないまま6カ月も仕事から離れており、状況が改善しなければカナダに戻ることを考えている。
「いきなり今後の見通しがきかなくなるというのは、非常に戸惑うし、気が重い」と、セイマーさんは言う。
国際通貨基金(IMF)によれば、中東諸国は今年、2008年の金融危機、そして原油価格が急落した2014─15年をしのぐ深刻な景気後退に見舞われようとしている。各国とも、新型コロナによる経済活動の停滞と記録的な原油安という二重苦を受けているからためだ。
ノムラ・アセットマネジメント・ミドルイーストのタレク・ファドララー氏は、「外国人労働者が減れば、ピザから別荘に至るまで、あらゆるものの需要が低下する」と話す。「怖いのは、それによって第2波の雇用減少を伴う連鎖的なデフレ効果が生じることだ」
ドバイのライドシェア大手カリームや、複数の航空会社がレイオフに踏み切った。
商業と観光の中心地であるドバイは今年、国際博覧会(ドバイ万博)による経済効果を期待していた。だが、万博は来年10月に延期された。
ロイターが閲覧した内部文書によると、ドバイ万博公社は179人の職員を解雇した。同公社はコメントを拒否している。
「外国人労働者は単なる歯車ではない。地域経済の存続に必要な各国の資本を回転させる上で欠かせない」と、米ワシントンにあるアラブ湾岸諸国研究所のロバート・モギルニッキ常任研究員は言う。
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