マクロスコープ:中国の対日禁輸、政府内に動揺 「企業ごとに選別」との見方も
写真は中国と日本の旗。2022年7月撮影。REUTERS/Dado Ruvic
Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 7日 ロイター] - 中国商務省がデュアルユース(軍民両用品)の日本向け輸出を即時禁止すると発表したことを受け、日本政府内には動揺が広がっている。高市早苗首相の台湾有事を巡る発言に対する対抗措置として、中国側が圧力を強めているとの見方が大勢だ。実際に禁輸となる品目の範囲が不透明な中、政府内には「中国は企業ごとに対応を分けるのでは」との声も出ている。
<「高市氏個人がターゲット」のはずが>
「我が国のみをターゲットにした措置は国際的な慣行と大きく異なり、決して許容できず極めて遺憾だ」。木原稔官房長官は7日の記者会見でこう述べ、改めて中国側に措置の撤回を求めた。「措置の対象など不明瞭な点も多く、産業への影響についてのコメントは差し控える。内容を精査、分析の上、必要な対応を検討していきたい」とも語った。
政府内には動揺する声もある。高市氏が昨年11月、台湾有事は日本の集団的自衛権が行使可能となる「存立危機事態」に当たり得るとの趣旨の国会答弁をして以降も、中国は日本経済に大きな打撃を与えるような措置には抑制的だと見られていたからだ。外務省幹部は「中国は高市氏個人をターゲットにしている。日本の経済界を敵に回すようなことはしないだろう」とも語っていた。
ただ、今回の措置には日本が中国からの輸入に頼るレアメタル(希少金属)やレアアース(希土類)が含まれる可能性もある。対象となる品目や企業が拡大すれば、半導体や自動車産業などへの打撃も想定される。
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、「特に電気自動車(EV)用モーターに使用されるネオジム磁石の補助材料であるジスプロシウム、テルビウムなどのレアアースは、ほぼ100%を中国に依存しているとされる」と説明。「レアアース輸出規制が3カ月続くと仮定すると、生産減少額、損失額は6600億円程度となり、年間の名目・実質国内総生産(GDP)を0.11%押し下げる」と試算した。
<「中国の目的は分断だ」>
一方、政府内には中国による政治的圧力の側面が大きいとの見方もある。政府関係者は「中国は周到に『対日カード』を何枚も用意しているはずだ」とした上で、「高市氏に発言の撤回を求めてきたが、応じる姿勢が見られないために新たなカードを切ってきたのだろう」と分析。「経済界から悲鳴が上がれば高市政権の足元が揺らぐ。中国の目的は日本国内の分断だ」と述べた。
「今回の措置は想定通りだ」と話す関係者もいる。4日には韓国の李在明大統領が中国を国賓訪問し、習近平国家主席と会談したばかりだ。李氏は月内の訪日を予定しており、同関係者は「中国は韓国との蜜月を演出した直後の、日本が一番焦るタイミングを狙って措置を講じてきた」とした上で、「禁輸は全体を対象とするのではなく、企業ごとに対応を分けるのではないか。中国への投資に積極的な企業は対象から除外される可能性もある」と語った。
高市氏は昨年11月7日、衆院予算委員会で台湾有事の「存立危機事態」に当たる具体例について問われ、「戦艦を使い、武力の行使も伴うものであれば、存立危機事態になり得るケースであると私は考える」と述べていた。
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)





