最新記事

新型コロナウイルス

ニューヨークを救いに来た米病院船とは?

Everything to Know About the USNS Comfort, Docked In COVID-19-Stricken NYC

2020年3月31日(火)16時00分
マシュー・インペリ

米海軍の病院船コンフォート Eduardo Munoz—REUTERS

<大型病院に匹敵する米海軍の病院船がマンハッタンに到着。待望の救援とあって、外出規制下の市民がカメラ片手に殺到するハプニングも>

ニューヨーク市の新型コロナウイルスとの闘いを支援するために、米海軍の病院船「コンフォート」が3月30日にマンハッタンの港に到着した。

コンフォートが受け入れるのはCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の患者ではなく、それ以外の救急患者。市内の病院にかかる負担を軽減し、COVID-19の症状に苦しむ患者に費やす時間と資源を増やすことができるようにするためだ。

この船には病床1000床のほか、ICU(集中治療室)80床、12の手術室、血液バンク、医学研究室、薬局、放射線室、CTスキャン装置などが備わっている。医療スタッフは約1100人で、ほとんどが海軍の現役軍人だ。ニューヨーク停泊中に船内のすべてのスペースが使われるのか、またスタッフ全員が乗船しているかどうかは定かではない。

全米に広がった新型コロナウイルスとの戦いを支援するために派遣された米軍の病院船は、コンフォードだけではない。西海岸に送られた病院船「マーシー」は3月27日にロサンゼルスに到着した。2隻とも病院としてはアメリカで4番目の規模を誇り、どちらも1970年代から運用されている。

9・11テロでも活躍

病院船の派遣は、ドナルド・トランプ大統領による新型コロナウイルス対応策の一部。ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、アメリカにおける感染者は14万3000人を数え、少なくとも2572人が死亡している。ニューヨーク州では感染者が6万人を超え、死者は1000人を超えた。

ニューヨーク市はアメリカにおける新型コロナウイルス感染の震源地となっていることから、病院船を配備する今回の決定は地元の大歓迎を受けている。

歓迎が行き過ぎて、到着したコンフォートをひと目見ようと、市の外出規制を破って多くの野次馬が港に集まってしまうというハプニングもあった。

「コンフォートの写真と撮りに来た人々。感染予防どころではない」



「信じられないほど非生産的な光景。コンフォートが何のために来たと思ってるんだろう」


しかし、ベッドも医療品も医療スタッフも何もかも足りず、毎日綱渡りを強いられてきた当局にとっては大きな力だ。

「この措置は、すぐにニューヨークの状況を改善するだろう。そして病院船をわが都市に送ってくれた海軍に、われわれは本当に感謝している」と、ニューヨークのビル・デブラシオ市長は語った。

ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモは、「ニューヨークへようこそ。われわれには病院の収容能力を拡大が欠かせない。この船のおかげで、コロナウイルスとの戦いはまた一歩、前進する」とツイートした。

コンフォートは全長約280メートルの大型船で、もともとは戦闘で負傷した兵士の治療と看護のために設計された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、S&P・ナスダック3週ぶり安値

ビジネス

NY外為市場=ポンド下落、英中銀の利下げを確実視

ワールド

米国防権限法案、上院で可決 過去最大の9010億ド

ワールド

米財務長官、FRB議長候補ハセット氏への懸念を「ば
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中