最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナウイルスは人類への警鐘──感染症拡大にはお決まりのパターンがある

THIS OUTBREAK IS A WAKE-UP CALL

2020年3月6日(金)15時40分
マーガレット・ハンバーグ(米科学振興協会理事長)、マーク・スモリンスキー(エンディング・パンデミックス代表)

magSR200306_corona2.jpg

震源地の武漢では救急隊員たちも消毒措置を怠らない CHINA-BARCROFT MEDIA/GETTY IMAGES

一方で、人類は間違いなく進歩している。SARSの経験を持つ中国は今回、いち早く人への感染を把握し、発生の初期段階で情報を公開し、対応の透明性を高めた。国内の研究者らが新型ウイルスの遺伝子配列を公表したのも、過去の経験に一定程度学んだ成果と言える。

だが現時点で新型コロナウイルスによる肺炎を治療できる薬は見つかっておらず、ワクチンも開発されていない。個別の症状を緩和する手段はあるが、ウイルスを撃退する有効な方法は見つかっていない。

中国当局は国民の移動や大規模な集会の禁止、休校・休業などの強硬措置を講じ、人口1000万を超す大都市・武漢の封鎖にも踏み切った。都市全体の封鎖は住民のパニックや、物資の不足などによる混乱を招きかねない。こうした対応の是非は、感染拡大の抑制に有効だったかどうかで評価される必要がある。

また複数の近隣諸国が渡航者の検査や中国滞在者の入国制限を実施し、航空会社も中国発着便の運航中止などの措置を講じている。アメリカも、最近中国へ旅行した外国人の入国を禁じると発表した。

適切な対策を講じるためには、時間をかけて熟考し、体系的に取り組むことが望ましい。防疫体制の脆弱な国々は、もともと公衆衛生の体制が整っていない。相対的に整っている国々も、早期発見と即応能力では決して万全といえない。

WHOが公衆衛生上の緊急事態を宣言した理由の1つは、問題意識を高め、脆弱な国々を助けることにある。もしもウイルス検査や感染経路追跡のインフラを欠く国に感染が広がったら、当該国のみならず世界中の人の健康が危うくなる。感染症に対する各国の備えを指標化した世界健康安全保障(GHS)指数によると、パンデミックに対して完璧な備えを持つ国は存在しない。

アウトブレイクを防ぐ努力

人は危機に見舞われると目が覚める。だが、すぐにまた目覚まし時計のアラームを消してしまう。WHOはSARSの流行を受けて体制を見直した。多くの国が連携し、迅速な対応を調整するため、各国に担当者を配置した。だがエボラ出血熱のときも、多くの国の公衆衛生インフラは依然として脆弱だった。

いま私たちは危機の真っただ中にいる。はっきりと目が覚めている。今のうちにアウトブレイク(感染症の爆発的拡大)についての考え方を改めるべきだ。個別の事例への対応だけでなく、アウトブレイクという事態の再発を未然に防ぐ努力をすべきなのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBが金利据え置き、反対2票 利下げ再開時期の手

ワールド

ドイツ銀、資金洗浄疑いで家宅捜索 外国企業との取引

ワールド

米国務長官「イラン政府これまでになく弱体化」、デモ

ワールド

米財務長官「欧州はウクライナより貿易優先」、インド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに...宇宙船で一体何が?
  • 4
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 5
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 6
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 7
    人民解放軍を弱体化させてでも...習近平が軍幹部を立…
  • 8
    またTACOった...トランプのグリーンランド武力併合案…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    筋トレ最強の全身運動「アニマルドリル」とは?...「…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 10
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中