最新記事

米軍

米軍を襲ったイラン謎の衝撃波、解明には数年かかる

Military Will Study Brain Injuries From Iran Attack for Years: Pentagon

2020年2月26日(水)19時15分
デービッド・ブレナン

イランのミサイル攻撃で破壊されたイラクのアル・アサド基地を点検する米軍兵士(1月13日) John Davison-REUTERS

<攻撃直後は「死傷者ゼロ」だったが、実は米軍兵士11名が外傷性脳損傷を受けていた。防空壕の中にも届く衝撃波を受けたとみられる>

イランのミサイル攻撃で米軍兵士が負った負傷の謎を米軍の科学者が解明するには、数年かかると、米国防総省の幹部が明らかにした。

イランは1月8日、米軍が駐留するイラクの基地2カ所をミサイルで攻撃した。このとき米軍に重傷者が1人も出なかったのは「通常では考えられないこと」だったと、米統合参謀本部の医務官のポール・フリードリクス空軍准将は2月24日の記者会見で述べた。

米軍もドナルド・トランプ米大統領も攻撃当初、「死傷者ゼロ」と発表したが、後になって、イラクのアンバール県にあるアル・アサド空軍基地に撃ち込まれた11発のミサイルで、少なくとも11名の兵士が外傷性脳損傷を受けていたことが判明したのだ。フリードリクスの説明によると、症状は多岐にわたるが、重傷者がいないのは確かだという。大半は、すでに軍務に復帰している。

<参考記事>イラン対米ミサイル攻撃、犠牲者ゼロの理由 米兵救った謎の「事前警告」とは?
<参考記事>イランのイラク基地ミサイル攻撃、米兵士11人が負傷していた

死後しか診断できない傷

外傷性脳損傷は、通常の診察とMRI検査で多くを把握できるものの、損傷の程度を判定するには、脳の損傷箇所を採取して顕微鏡で組織検査を行わない限り難しい、とフリードリクスは言う。こうした組織検査は死後にしか行えない。脳表面の傷か脳内出血ならMRIで検出できるが、神経系統の微細な損傷は組織検査でしかわからない。「最終的な確定診断が下せるのは、患者が死亡した後だ」とフリードリクスは述べた。

だが、諦めるつもりはないとフリードリクスは言う。「我々は学び続ける組織だ」と、フリードリクスは続けた。「今あるデータを詳細に分析し、他のデータと比較していく。結果が出るまでにはおそらく数年を要するだろう」

イランの攻撃は、1月5日にイラン革命防衛隊のカセム・スレイマニ司令官を米軍が殺害したことに対する報復だった。ファテフ110ミサイルなどの短距離弾道ミサイル12発以上が発射され、そのうち11発がアル・アサド空軍基地に着弾した。ゲリラが撃ってくるものと呉べれば、はるかに強大な兵器だ。「その強大さを思えば、片脚や片目を失った兵士がいないのは驚くべきことだ」とフリードリクスは言う。

米軍はこのミサイル攻撃について何者かの事前警告を受けており、兵士の大半は防空壕に退避できた。だがそれでも、脳損傷を起こすほどの衝撃波を受けていた。その症状には、頭痛、めまい、記憶障害、平衡感覚の障害、吐き気、嘔吐、集中力の欠如、興奮症状、視覚障害、耳鳴りなど多岐に渡る。

米国防総省は、将来危険な衝撃波にさらされた人員をより明確に把握するため、圧力センサーの実地テストを開始していると、フリードリクスは言った。「どの兵士が衝撃波にさらされたかわかる携帯用の圧力計だ。攻撃を受けたとわかったら、すぐに調べる」

(翻訳:ガリレオ)

20200303issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月3日号(2月26日発売)は「AI時代の英語学習」特集。自動翻訳(機械翻訳)はどこまで使えるのか? AI翻訳・通訳を使いこなすのに必要な英語力とは? ロッシェル・カップによる、AIも間違える「交渉英語」文例集も収録。

ニュース速報

ワールド

米ラッパーのカニエ・ウェスト氏、米大統領選出馬を表

ワールド

米39州で新型コロナ感染者増加、連休後さらに拡大と

ビジネス

アングル:コロナワクチン開発、中小勢から遠のく投資

ワールド

焦点:コロナで再び台頭する保護主義、貿易戦争が世界

MAGAZINE

特集:Black Lives Matter

2020-7・ 7号(6/30発売)

今回の黒人差別反対運動はいつもとは違う──「人権軽視大国」アメリカが変わる日

人気ランキング

  • 1

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようやくプロセスが明らかに

  • 2

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 3

    韓国、Netflix急成長にタダ乗り議論で法改正 政府は韓国版Netflix育成を宣言

  • 4

    オーストラリア経済の長期繁栄に終止符 観光・教育・…

  • 5

    新型コロナのワクチンはいつになったらできる?

  • 6

    「バイデン大統領」に備える投資家 ドル売りに米株保…

  • 7

    東京都、3日の新型コロナ新規感染は124人 小池知事「…

  • 8

    東京都、新型コロナウイルス新規感染111人 4日連続3…

  • 9

    東京都、新型コロナウイルス新規感染131人 3日連続3…

  • 10

    ブラックホール爆弾から無限のエネルギーを取り出す…

  • 1

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 2

    世界最大の中国「三峡ダム」に決壊の脅威? 集中豪雨で大規模水害、そして...

  • 3

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小池知事が緊急会見「現在は感染拡大要警戒」

  • 4

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようや…

  • 5

    英首相ジョンソン、香港市民の英市民権取得を確約 中…

  • 6

    スウェーデンの悪夢はパンデミック以前から始まって…

  • 7

    東京都、3日の新型コロナ新規感染は124人 小池知事「…

  • 8

    韓国「炭酸カリウム」を不当廉売? 経産省が調査開…

  • 9

    北京で6月にクラスター発生したコロナウイルス、東南…

  • 10

    中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで…

  • 1

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 2

    世界最大の中国「三峡ダム」に決壊の脅威? 集中豪雨で大規模水害、そして...

  • 3

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようやくプロセスが明らかに

  • 4

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小…

  • 5

    ポスト安倍レースで石破氏に勢い 二階幹事長が支持…

  • 6

    自殺かリンチか、差別に怒るアメリカで木に吊るされ…

  • 7

    街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食…

  • 8

    中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで…

  • 9

    宇宙に関する「最も恐ろしいこと」は何? 米投稿サ…

  • 10

    「この貞淑な花嫁は......男だ」 イスラムの教え強い…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月