最新記事

新型肺炎

武漢の新型コロナウイルス感染者は公式発表の約7倍?──香港大

Virus May Have Already Infected 76,000 in Wuhan

2020年2月3日(月)16時55分
パラシュ・ゴシュ

中国の武漢から戻ってきた機体を消毒するロイヤル・ヨルダン航空の職員(ヨルダンのアンマン、2月1日) Royal Jordanian Airlines/REUTERS

<「新型肺炎はすでに北京などの大都市で急増中」とも>

新型コロナウイルスによる肺炎の流行は、これまで考えられていたよりも深刻な事態になっているのかも知れない。

1月31日に発表された香港大学の研究論文によれば、肺炎が最初に発生した中国湖北省武漢市では感染者数が7万6000人近くに達している可能性がある。中国政府が発表した公式な推計値を大きく上回る数字だ。

香港大学医学部のガブリエル・リアン学部長率いる研究チームの推計によれば「1月25日までに武漢では7万5815人が感染した」という。

中国政府は3日、新型肺炎による死者は361人に達し、感染者は計1万7205人になったと発表した。このうち湖北省での感染者数が1万1177人だという。

「2019-nCoV」と名付けられたこのウイルスは、中国以外に少なくとも26カ国と地域に広がっている。

リアン学部長は声明で、「武漢の公式な数字がわれわれの推計値よりはるかに少ないのには、いくつかの要因があるだろう」と述べた。

感染者が治療を受けられるまで時間がかかっていること、そして感染を確認するための検査にも時間を要することが大きいのではないかとリアン学部長は言う。

1週間ごとに倍増のペース

また、今回の論文によれば、武漢では1人の感染者は平均して2~3人に感染させている可能性がある。6.4日ごとに感染者数が2倍に増える計算だ。

論文にはこう書かれている。「2019-nCoVの感染力は、中国国内のいずれの場所でも変わらないし、以前と比べて変化してもいない。武漢での発生から1~2週間遅れて、ウイルスは中国国内の複数の大都市でも急激に拡大していると思われる」

まったく新しいウイルスの急速な感染拡大、特に医療システムの対応能力を超えつつあるという緊急事態において「公式な数字からこぼれる感染者もいるかも知れない」と論文は指摘している。

もし今回の推計が正確なら、世界的な感染者の総数は10万人単位になっているかも知れない。

またこの研究によれば、感染はすでに武漢から、広州や北京、上海、深圳といった大都市にも広がっている可能性がある。

さらに懸念される問題として研究チームは、中国発の国際航空旅客の半分以上がこれらの都市から出発するという点を挙げた。

論文の共著者である香港大学のジョゼフ・ウー教授は、症状が出ていない感染者があちこちに広がっているので、すぐに対策が取られなければ、「中国との交通の便がいい海外の大都市もまた、ウイルス流行の震源地になりうる」と警告する。

<参考記事>新型コロナウイルス で世界的なマスク不足、文化的認識の違いから衝突も
<参考記事>新型コロナウイルスから身を守る10の方法(科学ジャーナリスト執筆)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ

ワールド

ベネズエラ沖で2隻目の石油タンカー拿捕、米が全面封
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中