最新記事

新型肺炎

新型コロナウイルス不安で世界的なマスク不足、文化的認識の違いから衝突も

2020年2月3日(月)16時30分
松丸さとみ

イングランドでサッカーを観戦するファン Peter Nicholls-REUTERS

<新型コロナウイルスへの不安から、欧米では通常、マスクをする習慣はこれまでほとんどなかったが、マスクが軒並み売り切れになっているという......>

欧州や米国でも深刻なマスク不足

新型コロナウイルスによる肺炎が世界的に拡大している中、マスク不足も広がっている。欧米では通常、マスクをする習慣はこれまでほとんどなかったが、新型肺炎への不安から、マスクが軒並み売り切れになっているという。

工業製品・事務用品メーカー大手の米スリーエム(3M)は、医療機関でも用いられている高性能なマスクN95を製造している。英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙によると、オーストラリアでの森林火災やフィリピンでのタール火山の噴火に続く新型肺炎の感染拡大で、3Mでは需給が逼迫。製造量をアップして対応しているが、3M製のマスクを扱う英国の卸売業者SPサービシズは、ここ1週間で2年分の需要が押し寄せているとFT紙に話した。

英国で軍用規格のマスクを製造しているザ・ケンブリッジ・マスク・カンパニーも、外国からの注文を含めこれまでにないほどの需要に直面している。FT紙によると、同社にはフランスやプエルトリコからも50万〜100万個の注文が殺到しており、すべて品切れ状態だという。

ニューヨーク・タイムズ紙(NT)は、米国でもマスクの買い占めが始まっており、品切れになっている薬局もある他、通販大手のアマゾンでも、消費者の手元に届く予定が数週間遅れる見込みだと報じている。

NT紙はまた、マスクは病気に感染している人がウイルスを広げないために装着すると効果的だが、健康な人にはあまり意味がないと指摘。健康な人がマスクを買い占めることで、本当に必要な病院や医療機関でマスク不足になってしまうと警告している。

マスク使用法の違いから?パリ地下鉄でアジア女性が受難

しかし国によるマスク使用法の違いから、思わぬ衝突も起きているようだ。

フランスのパリで暮らす中国出身のイラストレーター、シユ・ツァオさんは、パリの地下鉄で起きた話をイラストにしてインスタグラムに投稿した。マスクをしていたアジア人女性が、地下鉄で他の乗客に罵声を浴びせられ、電車から追い出されたらしいのだ。ツァオさんはこの出来事について、マスクの使用法が中国とフランスで異なることが原因なのではないかと綴っている。

中国では、マスクは予防の一環として装着する。しかしツァオさんによるとフランス保健省は、新型肺炎の症状が出ている人だけがマスクをするよう促しているのだという。こうした認識の違いから、マスクをしているとウイルスに感染しているのではないかとの誤解を与えてしまうようなのだ。ツァオさんはそのため、マスクをした東洋人を見ても、感染者だと決めつけて恐れるべきではない、と訴えている。この投稿には、3万7000件以上の「いいね」が集まっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

BRICS首脳会議、ガザ・イランへの攻撃非難 世界

ビジネス

日産、台湾・鴻海と追浜工場の共同利用を協議 EV生

ワールド

マスク氏新党結成「ばかげている」、トランプ氏が一蹴

ワールド

米、複数の通商合意に近づく 近日発表へ=ベセント財
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 7
    「シベリアのイエス」に懲役12年の刑...辺境地帯で集…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 10
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中