テマセク、運用資産が過去最高 米国リスクは峠越えたか

7月9日、シンガポールの政府系投資会社テマセクは9日、純ポートフォリオ価値が前年比11.6%増の4340億シンガポールドル(3400億米ドル)と、過去最高になったと表明した。シンガポールで2023年7月撮影(2025年 ロイター/Edgar Su)
Yantoultra Ngui
[シンガポール 9日 ロイター] - シンガポールの政府系投資会社テマセクは9日、純ポートフォリオ価値が前年比11.6%増の4340億シンガポールドル(3400億米ドル)と、過去最高になったと表明した。
米国の移民・関税・財政引き締め政策を巡るリスクはピークを過ぎた可能性が高いとの見方も示した。
テマセクの企業戦略共同責任者、リム・ミンペイ氏はロイターに「関税については、今後数週間から数カ月間、引き続き注意深く見守る必要がある」と語った。
ロヒット・シパヒマラニ最高投資責任者(CIO)は、関税率が4月2日の「解放の日」以前の水準に戻ることはないだろうと指摘。ただ、米国の景気減速につながるとみられていた財政引き締めなど、一部のリスクは、トランプ氏の大規模な減税・歳出法案成立により緩和されたと述べた。
シパヒマラニ氏は「一般的に言って、関税を巡る不確実性のために足元で景気が減速しているが、年末に向けて回復するはずだ。特に連邦準備理事会(FRB)が利下げを行い、規制緩和が進み、関税を巡る透明性が増すにつれてそうなる」と指摘。
その上で「米国の課題はバリュエーションだ」と指摘した。
ただ、リム氏は「米国の世界クラスのAI能力など、明るい点がある。これはあらゆるセクターに変革をもたらす」と述べた。
同社の最大の海外投資先は引き続き米国。米州がポートフォリオに占める比率は3月末時点で24%。前年同期は22%だった。
テマセクの純ポートフォリオ価値の増加は2年連続。主にシンガポール国内の上場企業のほか、中国、インド、米国への直接投資のパフォーマンスが好調だった。
リム氏は、中国の長期的な見通しが依然として明るいと指摘。中国がポートフォリオに占める比率は3月末時点で18%で、シンガポール(27%)、米州(24%)に次ぐ3番目の市場となっている。
同氏は「グリーンエコノミーや生命科学のイノベーション、規模を拡大し底堅い成長を続ける主要国内ブランドにチャンスがある」と述べた。
今後は、キャッシュフローと利益が安定した企業や、関税や地政学リスクの影響を受けにくい大規模な国内市場への投資を重視する。インフラと人工知能(AI)にも注目している。
AI分野ではエヌビディア、データブリックス、Veeamなどに投資している。