最新記事

感染症

アメリカで初の新型肺炎患者 WHOは「緊急事態」宣言か

First U.S. Case of Coronavirus From China Identified in Seattle, Washington

2020年1月22日(水)16時05分
ジェニー・フィンク

世界に広がる新型ウイルスの脅威(写真は1月21日、クアランプール国際空港の検疫) Lim Huey Teng-REUTERS

<急激に広がる新型肺炎、WHOが緊急委員会を開く前日に、アメリカで初の感染例が確認された>

中国湖北省武漢市を中心に発症が相次ぐ新型コロナウイルスによる肺炎は、タイ、韓国、日本などへと広がって、このたびアメリカでも感染者が確認された。

米疾病対策センター(CDC)の広報担当者は1月21日(現地時間)、ロイターの取材に対し、中国からワシントン州シアトルに到着した人物が、新型コロナウイルスに感染していた、と語った。アメリカでこのウイルス感染が確認されるのは初めてだ。世界保健機関(WHO)は22日にも、このウイルスの流行が国際的な「緊急事態」の要件を満たすかどうかを判定するための委員会開催を準備している。

WHOによると、「2019-nCoV」という名のこの新型コロナウイルスは、過去に人間への感染例がなかった株で、肺炎の一種を引き起こす。このウイルスの遺伝情報を解析した結果、重症急性呼吸器症候群(SARS)に最も似ていることが判明したと、BBCは報じている。症状としては、高熱やせき、呼吸困難などが挙げられる。

AP通信によると、22日午前の時点で中国の死者は9人、感染者は440人に拡大した。感染者の多くは武漢にある動物の市場と接点があったため、動物から人への感染で拡散したと考えられている。しかし市場と接触がないのにウイルスに感染した例も確認されたことから、人から人にも感染が広がっているとみられる。

<参考記事>中国、新型肺炎の死者6人に 感染者は海外も合わせ300人突破
<参考記事>新型肺炎パンデミックの脅威、真の懸念は中国の秘密主義

特効薬はない

中国以外では日本、韓国、タイなどで感染例が報告されたが、CDCは17日、アメリカ人へのリスクは低いとの見解を発表していた。それでも「予防的準備措置」として、CDCおよび国土安全保障省の一部門である米税関・国境警備局(CBP)は、アメリカの主要3空港において検疫体制を強化した。

この追加検疫は、サンフランシスコ国際空港、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港、ロサンゼルス国際空港に到着した乗客のうち、直行便あるいは乗り換え便で武漢から渡航した者が対象だった。乗客は体温を計り、身体症状に関する質問票に答える。

22日(現地時間)には、WHOのメンバー16名と顧問5名が集まり、緊急の委員会を開く予定だ。「2019-nCoV」ウイルスが公衆衛生上の緊急事態の要件を満たしているかどうかを判定するとともに、感染の広がりを食い止めるためにどのような勧告を出すべきかを話し合う予定。

新型ウイルスについては、専門家がその性質を探っている段階だ。コロナウイルスには変種が多いため、特効薬は存在しない。とはいえ、個々の症状については手当てが可能だ。WHOのマリア・ファン・ケルクホーフェは、感染を防ぐ手立てを取るよう呼びかけている。石けんと水で手を洗う、くしゃみをするときは口元を手ではなくひじなどで覆う、すべての肉類はよく火を通してから食べる、などの対策が推奨されるという。

(翻訳:ガリレオ)

20200128issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月28日号(1月21日発売)は「CIAが読み解くイラン危機」特集。危機の根源は米ソの冷戦構造と米主導のクーデター。衝突を運命づけられた両国と中東の未来は? 元CIA工作員が歴史と戦略から読み解きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド経済、11月も高成長維持 都市部消費などが支

ワールド

トランプ氏、プロジェクト遅延巡り防衛企業と協議へ 

ワールド

トランプ氏、マドゥロ氏に退陣促す 押収石油は「売却

ワールド

英予算責任局、来年3月3日に経済・財政予測公表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中