最新記事

教育

TOEICスコアが日本より150点も高い韓国でも、英語が話せるとは限らない

2019年11月8日(金)19時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

日本では今回の入試制度の改革は、「一度だけではなく、何度も試験にチャレンジできるチャンスを増やしてあげよう」「日本人が英語を話せないのは受験制度に問題があるからだ。受験に『話す』と『書く』項目を増やしたら、英語を話せる人が増えるだろう」といった利点を期待して計画されたようだ。だが本当に今回のシステムが導入されていたら日本人は英語を喋れるようになっただろうか?

上記に紹介したように、韓国には数人の人気TOEICティーチャーがいる。そこで、TOEIC講義動画を見てみたが、内容はいかに点数をあげるかという「点の取り方のコツ」を中心に展開している。それはさながらゲームのようで、なるほど確かに点数は上がりそうだと納得はするものの、これで本当に英語を話せるようになるのかは正直分らない。

TOEICスコアが高くても話せない

多くの人がビジネスに有利になるからと高いスコアを出そうと躍起になっているTOEICやTOEFL。だが、筆者個人としてはその信頼性には疑問を感じている。

以前、韓国の配給会社で映画買い付けを担当していた。海外で様ざまな国の人と買い付け金額を交渉するため、当然社員には英語は必須である。そのため新入社員の採用の際は、もちろん履歴書にTOEICやTOEFLなど英語民間試験の点数を記入してもらっていた。

面接もなるべくこれらの点数の高い人に来てもらっていたのだが、実際会って「最近見た映画のストーリーとどこが良かったのか英語でちょっと話してみてください」というと、意外にも会話ができない応募者が多かった。なかには「無理です」と英語で話すことさえ拒否する人も。こうした面接を数回経験した後、点数はもう信じないことにし、点数は低くても映画に情熱がある人に面接に来てもらうことに切り替えた。

最終的にオタクなまでに好きな『スター・トレック』の映画についてベラベラ熱く語りだした人を採用したが、これが大正解で、彼は今でもバリバリ世界中を飛び回って映画の買い付けをしている。

日本人は英語を喋れない人が多いのは事実だ。グローバル化が進むなか、それを何とか打開するため大学入試の方法から変えようという取り組みがあったことは、未来に希望がもてる。

しかし、実際にTOEICなどの民間試験で高いスコアを出す韓国ですら試験そのものが目的化されていることをみると、日本の大学入試に民間試験を取り入れても日本人がどれだけ英語をしゃべれるようになるのか疑問が残る。

本当に英語で話せるようになるためには、何より「英語でこのことを伝えたい!」というモチベーションの強さが重要なのではないだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 6
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 7
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 8
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 9
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中